United Parcel Service(UPS)は2017年5月2日(現地時間)、燃料電池車の配送車の試作車を開発したことを発表した。試作車は、2017年第3四半期からカリフォルニア州サクラメント周辺に投入し、運用状況を見ながら台数を増やし、すべての燃料電池車で5000時間の業務をこなすことを目標としているという。カリフォルニア州に投入する理由としてUPSは、同州が排ガス規制をどんどん強化しているという点と、それに対応して排ガスを出さない自動車(ゼロエミッション車)を運用する環境が整いつつあるという点を挙げた。電気自動車向けの充電器や、燃料電池車向けの水素ステーションの整備が進んでいるということだ。
図 United Parcel Serviceが開発した燃料電池車の配送車
出所 United Parcel Service
UPSが投入する燃料電池車は、出力32kWの燃料電池と、出力45kWのリチウムイオン蓄電池を搭載し、水素は最大で10kg充填できるという。一回の充填での連続走行距離はおよそ125マイル(201km)。ほかの燃料電池車と異なり、蓄電池だけで走行できる時間を伸ばしているという特徴がある。高速道路走行中でも蓄電池だけで走行可能だという。この燃料電池車の開発には、アメリカのNPO法人であるCenter for Transportation and the Environmentや、テキサス大学オースチン校の電気機械センターなどの協力を得ている。
UPSはこれまでも、「UPS Rolling Laboratory」という自社の研究所で、CO2排出量が少ない代替燃料の研究に取り組み、実車に投入してきた。これまでに、圧縮天然ガス、液化天然ガス、バイオマス燃料であるメタン、エタノール、プロパンガスなどを燃料として利用することを目指して研究し、商業運用に利用してきた。UPSはこれまで代替燃料の研究開発に7億5000万米ドル以上を投入したという。そして、代替燃料や電力で走る配送車は、地域の特性を十分に考えて投入している。水素を燃料とする燃料電池車もUPSにとっては現在のところ、代替燃料車の1種として評価すべきものなのだろう。