[M2M/IoT向けサブGHz版Wi-Fi規格「IEEE 802.11ah」と市場展望]

IEEE802.11ahとは何か? IEEE 802.11ahの標準化状況

M2M/IoT向けサブGHz版Wi-Fi規格「IEEE 802.11ah」と市場展望 第1回
2015/04/01
(水)
大澤 智喜 株式会社ブリッド 代表取締役社長/インプレスSmartGridニューズレター コントリビューティングエディター

スマートグリッド、M2M/IoT時代を迎え、米国電気電子学会(IEEE)において、900MHz(サブGHz)帯域で運用できる新しい無線LANの国際規格「IEEE 802.11ah」(いわゆるWi-Fiグループ)の検討が、2016年3月の完了を目指して、急ピッチで進められている。
ここでは、既存のWi-SUNアライアンスのWi-SUNや、ZigBeeアライアンスのZigBeeIPなどのサブGHz帯無線技術(日本では920MHz帯)などと比較しながら、IEEE 802.11ahに関する標準化動向や、今後の市場展望をレポートする。

サブGHz版Wi-Fi「IEEE802.11ah」とは何か

〔1〕802.11ahはIoT/M2Mを目指すWi-Fiグループ

 スマートグリッド、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)やM2Mなどの新市場を対象とした新しい無線通信技術として、900MHz帯のWi-SUNやZigBee IP、Z-Waveなどの技術が整ってきた。これらの技術は、電気やガス、水道などの検針メーターにネットワーク機能をもたせ、無線通信によってデータを収集することを主目的としている。 

 さらに、これまでネットワーク化されていなかった家電や宅内設備を連動させてエネルギー効率や快適性を向上したり、家庭やビルのエネルギー管理システム(HEMS/BEMS)などへの搭載をも目的としている。

 Wi-SUNやZigBee IPに比べて標準化が遅れていた、900MHz帯(サブギガ帯:サブGHz帯)を使用するIEEE 802.11ahの標準化が急ピッチで進められている。IEEE 802.11はこれまで、高速化を目指して802.11a/b/g/nに加えて802.11ac/adなどが次々に標準化されて、Wi-Fiアライアンスで認証され、Wi-Fiグループとして広く市場で普及している。さらに、現在、これらのWi-Fiグループのひとつとして、IEEE 802.11においても900MHz帯を使って、IoTやM2Mに適したIEEE 802.11ahの標準化の議論が進められている。

 それでは、IEEE 802.11ahは、Wi-SUNやZigBee IP、Z-Waveと比べて、どのような機能的違いがあるだろうか。その違いを簡単にまとめたものが、表1である。

〔2〕Wi-SUN:東電のスマートメーターに採用

 表1に示す各方式は、それぞれ、MAC制御注1や変調方式に別々の方式を採用しているため、通信の互換性や相互接続性はない。

 表1に示すWi-SUN(Wireless Smart Utility Networks)は、NICT(独立行政法人情報通信研究機構)が主導して、研究・開発と標準化の推進を行い、2012年1月に策定されたIEEE 802.15.4g/4e規格をベースに相互接続をもつ無線通信規格である。国内外の企業が加盟して標準化を行ってきた規格となっており、Wi-SUNアライアンスによって、上位層(トランスポート層)までのインタフェースが規定されている。

 東京電力では、管内2,700万世帯の従来の家庭用の電力メーターに対して、2020年までに整備予定の「スマートメーター」と「宅内エネルギー管理システム」(HEMS)の間の無線通信方式として920MHz帯を使用するWi-SUN規格の採用を決定(2013年9月)。すでに2014年4月から、このWi-SUN規格を装備したスマートメーターの設置が開始されている。

〔3〕オープンなZigBee IPを策定

 一方、ZigBeeアライアンスによって策定されているZigBeeは、2.4GHzおよび900MHz帯をサポートしており、IEEE 802.15.4(物理層・MAC層)をベースとした、センサーネットワークを主な目的とした近距離無線通信規格である。もともとはTCP/IPに対応した仕様ではなく独自規格である。

 しかし、スマートグリッド分野にZigBeeを採用するにあたって、NIST(National Institute of Standards and Technology:米国国立標準技術研究所)などからのスマートグリッドへのオープンな要求に対応(IPに対応)するため、IETF(インターネット技術標準化委員会)で、6LowPAN(IPv6 over Low power Wireless Personal Area Networks)というヘッダの分割・省略・圧縮を行う規格などが定義・策定された。これによって、IPプロトコルを扱える「ZigBee IP」仕様となり、オープンなIP対応の通信方式となった。

 日本向けには、920MHz帯を使用する「920IP」(920MHz対応のZigBee IP規格)が発表されている。

〔4〕Z-Wave:国際標準へ

 またZ-Waveは、欧州デンマークのZensys(ゼンシス)社によって開発された無線技術であるが、このZensysは2008年末に米国Sigma Designs(シグマデザイン)社に買収され、現在、Z-Waveアライアンスによって、機器の認定などが行われている。

 Z-Waveアライアンスは、欧州企業が中心に立ち上げたアライアンスで、900MHz帯をサポートした無線通信規格となっており、日本では920MHz対応のZ-Wave製品が提供されている。

 用途としては、ホームオートメーションとセンサーネットワークのような低電力、長時間運用を要求する装置向けに設計された。他の規格と違い、IEEEの規格をベースとしていないが、「ITU-T G.9959」(ITU-T勧告G.9959)として国際標準規格(2012年2月)となっている。


▼ 注1
MAC制御:Medium Access Control、媒体アクセス制御。端末などが送信する信号を、どのようなタイミングで媒体(LANケーブル、あるいは無線の空間)に送出するかなどを制御すること。

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