[特別レポート]

山・海・街・空の制覇を目指す通信品質を重視したソニーのセキュアな「LPWA」

― なぜ、片方向通信にこだわるのか ―
2017/07/27
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

ソニーのLPWAが片方向通信にこだわる理由

 ソニーは、LPWAへの参入は後発であるところから、ソニーの技術を使用して通信距離や低消費電力(電池寿命)、サービスなどを含めて、通信品質にこだわったセキュア(安全)なLPWAを実現し、他のLPWAとの差異化を目指している。

 ソニー社内でも、双方向通信の検討も行われたが、双方向通信の場合、

(1)基地局側だけでなく、端末側でも送信と受信の両方をできる必要があること

(2)このため、端末側の待ち受け電力が必要になること

(3)通信距離を長くするということは、端末の送信機能も受信機能も同じ感度が求められるため、端末のアンテナを大きくすることや、送信と受信の両方の電力消費も必要となること

などのデメリットが挙げられた。

 これに対して、片方向通信に特化することによるメリットとデメリットに関して、メリットとして、

(1)ワンコイン電池で長時間動作できること

(2)自分が電波を送信したい時のみ端末を動作させればよいこと

(3)送信側(端末)の電子回路がシンプルになり、低価格化、低消費電力化ができること

(4)これによって、端末(トラッカー)を人にも動物にも、モノにも付けやすくなること

などが挙げられた。

 また、デメリットとして、

(1)端末のソフトウェア・アップデート(更新)ができないこと

(2)センター(送信局)から端末を制御したい時にそれができないこと

などが挙げられ、検討が行われた。

 このような検討結果を考慮して、当面、第1世代のLPWAは片方向通信とすることに決定した。ただし、今後、双方向通信のニーズが高くなり、いくつかの課題(通信距離や消費電力の課題)が克服されれば、双方向通信への対応も検討していく。

 なお、1つの基地局(受信基地局)で、商用サービスでは端末1万台を収容することを目指しているが、現実的には、数千台との収容とみられている。PoCキットの場合は、1基地局当たり端末30台(トラッカー)を予定している。

具体的な実証実験の例

 次に、ソニーのLPWAによる各種実証実験の例を紹介しよう。

 図7は、東京都墨田区で2012年に開業した世界一の高さである東京スカイツリー(高さ:634m)にLPWA受信実験局を設置して、2017年4月から自転車や自動車の移動・走行試験を行っているところである。

図7 東京スカイツリーの受信基地局と自動車、自転車の走行実証実験

図7 東京スカイツリーの受信基地局と自動車、自転車の走行実証実験

出所 「ソニーが提案する新たなLPWA」、2016年6月

 図8の右は、埼玉県付近を走る時速220㎞程度の東北新幹線の実証実験で、受信基地局は、東京スカイツリーに設置されている。図8の左は、神奈川県・厚木にあるソニーの社屋の屋上に設置された受信基地局と、時速250㎞で走る東海道新幹線との通信の実証実験である。いずれも端末(トラッカー)は、新幹線の窓に設置されて実験された。

図8 新幹線からの受信実験

図8 新幹線からの受信実験

出所 「ソニーが提案する新たなLPWA」、2016年6月

*    *    *

 以上、ソニーのLPWAを見てきたが、ビジネスの展開は、LoRaWANのようなアライアンス形式ではなく、SIGFOXに類似したビジネスパートナー形式で展開される。また、国際標準化はETSI注8(欧州電気通信標準化機構)で行われている。

 今後、IoT時代の進展に合わせて、間もなく3GPP標準のLPWA(NB-IoTやeMTC)も商用サービスが開始される。しかし、3GPPのセキュアなLPWAは基地局当たりの通信範囲が数㎞と狭いため、用途によっては、250㎞以上の通信距離が可能なソニーのLPWAは、共存可能である。

 IoT時代に懸念される、サイバーセキュリティに対応して、3GPP標準のLPWAとセキュアなソニーのLPWAが、どのように共存しビジネスを展開していくか、目が離せない。


▼ 注8
ETSI:European Telecommunications Standards Institute、欧州電気通信標準化機構

ページ

関連記事
新刊情報
 2015年頃より、IoT(InternetofThings)や人工知能(AI)が注目され始め、これらの技術を使って家電や自動車などあらゆるモノがネットワークにつながり、効率的な社会を創造することが期...
 いよいよ日本でも、IoT時代に必須のLPWA(Low Power wide Area、省電力型広域無線網)サービスがスタートします。  第4次産業革命に向けて、エネルギー、ヘルスケア、製造業、...
 NIST(米国国立標準技術研究所)が2009年11月に立ち上げた委員会「SGIP」(スマートグリッド相互運用性パネル)は、2013年にSGIP 2.0となり、新たな活動を展開している。  SG...