日本無線は2017年1月11日、衛星からの信号だけでcm級の測位を可能にするチップ「JG11」を開発すると表明した。自動車の先進運転支援(ADAS:Advanced Driver Assistance System)や高度な自動運転実現に向けたものになる。2018年秋にサンプル出荷を開始する予定。
図 cm級の測位を可能にするチップ「JG11」のイメージ
出所 日本無線
JG11は、現在のカーナビゲーションシステムが利用している衛星からの信号に加えて、2018年から人口衛星4機体制で運用開始予定の準天頂衛星が発信する「L6」信号も利用して、cm級の測位を実現する。
準天頂衛星は、アメリカが運営しているGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)を補完するために日本政府が打ち上げを計画しているもの。GPSでは、30以上の人工衛星を運用しており、世界中でGPSを利用した測位が可能になっている。正確な測位のためには少なくとも4機、理想的には8機のGPS衛星からの信号を受信する必要があるが、全世界をカバーするGPS衛星は地球の裏側に位置するものもあるので、日本ではおおよそ6機のGPS信号を受信するのが限界だった。
準天頂衛星はアジア/オセアニア地域をカバーする軌道を描くので、4機体制で運営すれば日本でもGPSと合わせて8機の衛星からの信号を受信できるようになる。2010年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた「みちびき」がすでに軌道に乗っており、2017年度中に3機を打ち上げて、2018年には4機体制でサービスを開始する予定だ。
JG11はGPSのほか、ロシアが運営する衛星測位システム「GLONASS」や、中国が運営する「BDS」、EUが運営する「Gallileo」の信号を受信できる。これらの信号から得たデータに、準天頂衛星の「L6」信号を加えることで、cm級の測位を可能とする。L6信号は「センチメータ級測位補強サービス」の信号であり、GPSなどの信号だけではm単位でしか測位できないが、L6信号で補強することでcm単位の測位が可能になる。
日本無線はcm級の測位が可能になることで、衛星を利用した測位だけで、自動車が走行中の車線を識別できるようになり、先進運転支援や自動運転を補助できるとしている。さらに、農業や鉄道、土木工事などにもcm級の測位を活用できるという。
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日本無線