[クローズアップ]

動き出した米国カリフォルニア州のエネルギー貯蔵システム

─エネルギー貯蔵国際会議2014レポート─
2014/12/01
(月)

去る2014年11月6日、エネルギー貯蔵サミット・ジャパン(ESSJ)がTKP赤坂駅カンファレンスセンターで開催された(主催:メッセ・デュッセルドルフ・ジャパン)。ESSJは、ドイツ、米国、インド、中国で行われてきた「World of Energy Storage」シリーズの日本版で、エネルギー貯蔵に関係するエキスパートが世界中から終結する国際会議である。電力の自由化を目前にした日本において、再生可能エネルギーへの注目が高まるなか、エネルギー貯蔵システム(ESS)がその要の技術となるとあって、世界各国のエネルギー貯蔵技術や政策に注目が集まり、参加者は世界14カ国から230名を超えるという盛況ぶりであった。ここでは、現在、注目を集めている米国カリフォルニア州のエネルギー貯蔵システムの取り組み(AB- 2514)を中心に、その概要をレポートする。

エネルギー貯蔵の洗練された解決策が重要

写真1 駐日ドイツ連邦共和国大使館経済部長 Dr.S.グラーブヘア氏

写真1 駐日ドイツ連邦共和国大使館経済部長 Dr.S.グラーブヘア氏

ESSJの開会にあたって、駐日ドイツ連邦共和国大使館経済部長のDr.S.グラーブヘア(Dr.Stephan Grabherr、写真1)公使は、「日本においてエネルギー貯蔵ソリューションについてこれだけ大きなエベントが開催されるのは初めてである。再生可能エネルギーの促進は、エネルギー貯蔵の洗練された解決策なくしてありえない」と語り、「ご存じの通り、ドイツは2011年に脱原発を決定し、現在、太陽光や風力などの再生エネルギーのシェアを2025年までに45%に、2035年までに60%までに引き上げることを目標としている。今日ドイツにおける再生エネルギーのシェアは25%に達しているが、これらの掲げた目標を実現するには、効率的で柔軟なエネルギー貯蔵システムなしに達成できない」とアピールした。 

エネルギー貯蔵への関心の高まりと気候変動の問題

写真2 パデュー大学:M.ティルトン教授

写真2 パデュー大学:M.ティルトン教授

セッション1の「エネルギー貯蔵と対策:日本と海外の比較と事例」の司会を務めた、パデュー大学のM.ティルトン教授(Prof. Mark Tilton、写真2)は、「気候変動に関する政府間パネルが発表したばかりの最新報告によると、地球が温暖化していることを裏付ける科学的根拠は、化石燃料が主な要因であると結論付けている」「このような気候変動や二酸化炭素の排出を避けるために、相当な数の原子力を保有する日本や米国その他においても、事故などによって放射能が放出されることが心配されており、さらに放射能廃棄物の安全な貯蔵が必要であるとされている」と述べた。

さらに、「現在、再生可能エネルギーが注目を集めているが、これを効果的に使うための要になるのはエネルギー貯蔵システムの開発である」と続けた。また、「日本は1970代のオイルショック時において太陽光エネルギーを促進するʻサンシャイン計画ʼ注1を推進するなど、世界的なリーダーでもあり多くに技術開発が行われてきた。最近ではドイツが著しく再生エネルギーを導入している先進国となっているが、米国においてもカリフォルニア州などにおいても積極的に再生可能エネルギーへの取り組みが行われており、エネルギー貯蔵への関心が高まっている。

このような取り組みの背景には、気候変動の問題がある。国際的な取り決めはあるが、それを具現化するには、各国の各関係者が関連する事業に取り組むことが重要である。このサミットがその共有の場になることを期待したい」と結んだ。

カリフォルニア州のSCEが261MWの調達に成功

写真3 C.エジェット氏(Mr.Chris Edgett)

写真3 C.エジェット氏(Mr.Chris Edgett)

米国カリフォルニアエネルギー貯蔵協会(CESA注2)、ストラテジックコンサルティングLLC注3シニアディレクターのC.エジェット氏(Mr.Chris Edgett、写真3)は、「今朝(米国時間2014年11月5日)、カリフォルニア州において261MWの新しいエネルギー貯蔵システムが勝利した注4。これはエネルギー貯蔵において今年一番の画期的な情報です。また、カリフォルニアにおける新しいエネルギー貯蔵の第1歩であり、従来の化石燃料との戦いに勝利したのです」と興奮気味に、南カリフォルニア・エジソン(SCE)が、後述する2020年までの累積計画(580MW)の50%にも及ぶ261MWのエネルギー貯蔵システムを調達した(予定より早めに決定)ことをアピールした。

以下、講演内容に編集部が補足を行いながら、レポートする。


▼ 注1
サンシャイン計画:新エネルギー技術開発計画。経済産業省(旧・通商産業省)が第1次石油ショック(1973年)を契機に、石油に代わる新エネルギー(地熱、太陽熱発電、水素エネルギー等)の研究開発の推進を目的として、1974年に発足させた計画。

▼ 注2
CESA:California Energy Storage Alliance、カリフォルニアエネルギー貯蔵協会。

▼ 注3
ストラテジックコンサルティングLLC:Strategen Consulting LLC、カリフォルニアに拠点を置く戦略コンサルティング会社。

▼ 注4
http://energystorage.org/news/esa-news/california-energy-storage-boom-begins-competitive-procurement-announcement

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