KDDIは2017年5月17日、IoTデータ分析サービス「KDDI IoTクラウド ～データマーケット～」を発表した。6月中旬から提供を始める。このサービスの特徴は、自社のIoT端末で集めたデータを分析するだけでなく、他社が提供しているデータも掛け合わせて分析可能な環境を作っている点にある。
このサービスでKDDIが提供するものは主に2つ。クラウド上で動作する分析ツールと、他社から提供を受けたデータだ。分析ツールについては、サービス開始段階では3種類用意する。1つ目はESRIジャパンとKDDIが共同開発した「mapDISCOVERY」。分析結果を地図上に重ねて表示する機能を持つ。2つ目はKDDIグループのSupershipが開発するツール、3つ目はKDDIがアクセンチュアと設立した合弁会社ARISE analyticsが開発するツールだ。KDDIは分析ツールを順次追加していく方針を示している。
図 KDDIが「KDDI IoTクラウド ～データマーケット～」で提供する環境
出所 KDDI
他社提供のデータは7種類用意する。1つ目は最新店舗情報。2000以上の店舗チェーンの情報を毎日クローラーで収集する。2つ目はID-POSデータ。これは カスタマー・コミュニケーションズが提供する。ID-POSデータは、「いつ」「何が」売れたかという情報だけでなく、「誰が」「いつ」「何を」購入したのかまでを記録したデータだ。今回のサービスでは性別、年代情報を提供する。データの規模は全国延べ5000万人ほどになるという。
3つ目は将来の人口推移を推計したデータ。国政調査、国立社会保障・人口問題研究所による調査結果から推計して提供する。4つ目は訪日外国人観光客の動向を示すデータ。これはナイトレイが提供する。外国人観光客が主に利用するSNSへの投稿内容、投稿地点、季節、日時と投稿した本人の国籍を示すデータだ。ちなみに、日本人観光客のデータも提供できるという。
5つ目は人間が感じるストレス強度や心拍数などの生体情報だ。これはWINフロンティアが提供する。同社が提供しているスマートフォン向けアプリケーション「COCOLOLO（ココロ炉）」で、ユーザーが計測した値を集計解析したものを提供する。ちなみに、「COCOLOLO（ココロ炉）」の通算ダウンロード数は140万ほどになるという。6つ目は車両の走行状態を示すプローブデータ。業務用車両に取り付けた機器から収集するプローブデータを提供する。全国の幹線道を網羅する規模のデータで、走行車両の動きをつかむことができる。7つ目は、地震発生時の被災度を判定したデータ。ミサワホームとKDDIが共同で開発した被災度判定計「GAINET」が収集したデータを提供する。現在はGAINETを全国3000カ所に設置することを目標に準備を進めているという。分析ツールと同様に、KDDIは他社提供データも順次追加していくという。
KDDIはこのサービスを、新規店舗出店前の立地分析などに活用できるとしている。車両の走行状態を示すプローブデータを分析することで、候補地の前を通る道路の交通量、車両の通過速度が24時間365日計測したデータで把握できる。このデータに加えて、例えば自社でIoT端末を利用して計測した候補地前の歩行者の数、歩行速度、進行方向などを合わせて解析すれば、店舗を構えるのにふさわしい立地かどうかをより精密に判断できる。
今後、さまざまなデータが集まってくれば、突飛に思える組み合わせで分析することで、まったく見えなかった真実が見えるようになるかもしれない。KDDIには、もっともっと多くのデータを提供できる体制を整えることを期待したい。
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