複数DCが連携して電力需給を調整する技術を開発
東京電力パワーグリッド株式会社(以下、東電PG)と株式会社日立製作所(以下、日立)は、複数のデータセンター(以下、DC)が連携して電力需給を調整するエネルギーマネジメント技術を確立した。あるDCの計算処理を別のDCへ移動させるワークロードシフトにより、DCを調整力として活用する。2025年7月28日に発表した。
図1 東電PGと日立製作所による実証実験のイメージ
出所 東京電力パワーグリッド株式会社、 プレスリリース 2025年7月28日、「3エリア以上のデータセンター間における系統連携型エネルギーマネジメント技術の確立ならびにワークロードシフトの高速化について」
生成AIアプリケーションのダウンタイムを1秒以下に
2社の実証実験では、東京都内2カ所と神奈川県内1カ所の計3カ所のDCで実施した。DCを電力の調整力として活用するため、電力の供給が需要を上回るエリアのDCに計算処理を集中させ、逆に供給が不足するエリアのDCの処理を減らすことで、DC全体として電力需要を能動的にコントロールした。
具体的には、(1)3拠点間で調整力を最大化する最適なワークロードシフト、(2)需給調整市場の要件を満たす高速な電力需要調整、(3)大規模言語モデル(LLM)を含む生成AIアプリケーションのシフトという3つの項目を検証した。
生成AIアプリケーションのシフトについては、ダウンタイムを1秒以下に抑えた。これにより、移行元のDCで電力需要の低下や、移行先での電力需要の増加を10秒以内で実行できることを確認し、需給調整市場における「一次調整力」の入札要件を満たしたという。
LLMのような大容量データが伴うシフトにおいても、5分以内に処理を完了できることを確認しており、「二次調整力」の要件にも対応可能であることを実証した。
東電PGと日立は2022年10月から、電力需要の大きいDCをエネルギー需給の調整役(調整力)として活用する技術開発を進めてきた。今後、両社は、今回の実証で確立した技術の事業化を検討する。
東電PGによれば、生成AIの普及によりDCの電力需要は急増しており、電力系統への接続遅延や、再エネの出力抑制といった問題が懸念されている。
参考サイト
東京電力パワーグリッド株式会社、 プレスリリース 2025年7月28日、「3エリア以上のデータセンター間における系統連携型エネルギーマネジメント技術の確立ならびにワークロードシフトの高速化について」