写真1 “OPEN FUTURE”をテーマに開催された「東京モーターショー2019」
出所 筆者撮影
未来のタイヤを「IWMとIoT」で実現
EVの普及に伴ってバッテリーの残量が急に減ると最寄りの充電スポットへ確実に辿りつけるかどうかと不安になる場合が想定されるが、その解決手段の1つとして、走行中にEVへワイヤレス給電するシステムの開発が進んでいる。
また、運転中のクルマに突然、タイヤトラブルが発生した場合の不安を解消するため、タイヤに空気圧センサーが装備されていることは広く認識されているが、これをさらにIoTで対応させることによって、より強い安心感をドライバーに提供することが可能となる。
今回のモーターショーでは、ワイヤレス給電対応のタイヤや、新しいタイヤのIoTが、各社から展示されていた。
〔1〕ブリヂストン:世界初のワイヤレス給電対応タイヤ(IWM)
ブリヂストンは、EVに必要な受電から駆動までのすべてを、タイヤに内蔵する世界初の「第3世代走行中ワイヤレス給電インホイールモータ(IWM:In-Wheel Motor)」を開発注2し、出展した。これによって、道路(送電コイル)からタイヤ(受電コイル内蔵)内のインホイールモータに直接給電できるため、EVは走行しながら充電できることになる(写真2)。
写真2 世界初の「走行中ワイヤレス給電(IWM)タイヤ」とその仕組み(右)
出所 写真は筆者撮影、右図はhttps://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2019101002.html
これは、東京大学大学院新領域創成科学研究科 藤本研究室、日本精工株式会社、ローム株式会社、東洋電機製造株式会社などとの共同プロジェクトで開発されたもの。
ブースでは、受電から駆動までのすべてシステムを収納している世界初のタイヤが、展示されていた。
現在、日本のCO2排出量のうち、自動車からの排出量は17.9%(2017年度:環境省発表値)にのぼり、排出量削減が求められている。
これを踏まえて、世界中の自動車メーカーが車両の電動化(EV化)の開発・普及を推進しているが、大量のバッテリーを生産するため、資源の枯渇が懸念されている。
同プロジェクトでは、より少ないバッテリー搭載量でEVの航続距離を確保できる、走行中ワイヤレス給電IWMの技術開発を行っており、2025年に実証実験フェーズへの移行を目指している。
写真3 YOKOHAMA Intelligent Tire Concept
出所 筆者撮影
〔2〕横浜ゴム:タイヤのIoT化技術を出展
横浜ゴムは、CASE注3対応技術およびサステナブル社会の実現に貢献する環境技術を紹介していた。ここでは、同社のタイヤのIoT化技術「YOKOHAMA Intelligent Tire Concept」(写真3)を紹介しよう。
横浜ゴムは、タイヤに取り付けたセンサーから取得するデータ(タイヤ空気圧検知、摩耗検知、路面検知)をクラウドとつなぎ、タイヤと車両、ドライバーと通信端末、ロードサービス会社、ヨコハマタイヤ系列店などを連携させることによって、ドライバーへの安心と安全の提供を目指している(サービスインは現時点では非公開)。
また、同社はカーナビをはじめとする車載機器やさまざまなセンサーの開発・製造・販売をしているアルプスアルパインとの共同開発によって、CASEのうちのConnectivity(接続性)において、タイヤセンサーから取得できるデータをいかにドライバーにフィードバックするか、そのシステムやアプリケーション開発を進めている。
▼ 注1
https://www.tokyo-motorshow.com/
▼ 注2
https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2019101002.html
▼ 注3
CASE:CはConnectivity(接続性)、AはAutonomous(自動運転)、SはShared&Service(共有&サービス)、EはElectric(電動化)を示す。2016年にメルセデス・ベンツが発表したコンセプト。