新型コロナの危機を環境と成長のチャンスに
深刻な気象災害が多発し私たちの暮らしに影響を及ぼしている。加えて、新型コロナウイルス感染症によるダメージも大きい。小泉進次郎環境大臣から、新型コロナからの復興も「環境と成長の好循環」を念頭とすべきという方針が打ち出され、それをもとに環境省では石炭火力輸出方針の抜本的転換、ゼロカーボンシティなど脱炭素に向けた取り組みを推進している。
その1つが「地域環境共生圏」で、これは日本発の脱炭素化・SDGs注2ともいえる。サイバー空間とフィジカル空間の融合によって、地域から人と自然のポテンシャルを引き出す生命系システムとして位置づけ、その構成要素として次の5つを掲げている。
- 人にやさしく魅力ある交通移動システム
- 健康で人とのつながりを感じるライフスタイル
- 災害に強い街づくり
- 自律分散型のエネルギーシステム
- 多様なビジネスの創出
これらによって、AI、IoTなどを活用したSociety 5.0注3の中で地域循環共生圏を実現し、経済社会を活性化しながら環境保全を図り、きたるべき脱炭素社会、循環型経済、分散型社会の実現を目指す。
各種取り組みの支援にESG金融を促進
環境省
脱炭素化イノベーション研究調査室長 中島 恵理 氏
「環境省では補助金による支援だけでなく、ESG金融を支援することで民間の投資融資を入れながら進めていきたいと考えています」と中島氏(写真)。
ESG金融とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)という非財務情報を考慮して行う投融資のこと。環境への関心が高まる中、世界的に注目されているが、世界全体のESG投資残高に占める日本の割合は、2016年時点で約2%。その後2年で、国内のESG投資は4.2倍、2018年には世界全体の約7%に拡大している(図)。
図 世界のESG市場と日本のESG市場の比較
出所 環境省、中島 恵理、「脱炭素社会実現に向けた環境省の取組」、2020年11月5日
環境省では、現在実行しているグリーンファンド注4と同様な取り組みで、金融セクターがESG金融にコミットメントすることを促している。そのためのガイド作成や利子補給なども行っている。
また同省自身も、事業形成のためにコーディネートの役割を担っていく。こうしたことで、金融機関による再生可能エネルギー事業への融資を促進させ、環境関連事業に資金が集まるような金融メカニズムを構築。地域の環境課題解決をはじめ、パリ協定が求める気温上昇2℃未満抑制の目標やSDGsの達成などを、環境と成長の好循環のもとに進めていきたいと考えている。
▼ 注1
https://sgforum.impress.co.jp/event/2020
▼ 注2
SDGs:Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標。2015年9月に国連で採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標(2030年アジェンダ)。17のゴールと169のターゲットから構成され、全世界の国々や地域で取り組むべき課題とされている。
▼ 注3
Society 5.0:サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムによって、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の、超スマート社会を実現するというコンセプト。内閣府の第5期科学技術基本計画(2016年1月に閣議決定)で提唱された。
▼ 注4
グリーンファンド:環境省が所管する「地域脱炭素投資促進ファンド事業」によって設置された基金を活用した投資ファンド。