100%子会社のMUFGトレーディングが小売電気事業者に登録
株式会社三菱UFJ銀行(以下、三菱UFJ銀行)は、同社の100%子会社であるMUFGトレーディング株式会社(以下、MUFGトレーディング)から、年間約1,600万kWhの再エネを調達する(2025年7月1日から運用を開始。図1)。
この取り組みは、2025年3月28日に小売電気事業者として認可を受けたMUFGトレーディングによるパイロット案件(試験的に実施するプロジェクト)。実際の運用を通じてノウハウを蓄積し、今後は企業などの需要家に向けてサービスを拡大していく(図2)。
図1 三菱UFJ銀行とMUFGトレーディングとの取引イメージ
出所 株式会社三菱 UFJ 銀行、MUFG トレーディング株式会社 プレスリリース 2025年7月1日 「MUFG トレーディング、電力小売事業に本格参入」
貿易金融サービスを電力取引にも導入
MUFGトレーディングは、銀行法で新たに制度化注1された「他業銀行業高度化等会社」として2022年7月に設立された。この制度は、銀行に新たな領域での事業展開を可能にするもので、同社は企業の商品や原材料の調達・販売支援や、それに伴う新たなサプライチェーン構築を支援する。それと同時に、輸出入取引の際に資金供給や与信などの貿易金融サービスを提供し、スムーズな取引を支援する。
MUFGトレーディングでは当初、金属や半導体など現物取引を行っていたが、今後は小売電気事業にも乗り出す。その際、電力取引にも貿易金融を応用し、電力の需要家に対して、支払時期の調整や立替払いなど、資金繰りを考慮した金融サービスを提供する(図2)。
図2 需要家に向けたサービスのイメージ
出所 株式会社三菱 UFJ 銀行、MUFG トレーディング株式会社 プレスリリース 2025年7月1日 「MUFG トレーディング、電力小売事業に本格参入」
グループ全体で再エネ拡大と事業強化を目指す
三菱UFJ銀行グループは、カーボンニュートラルの実現に向けて、これまで積極的に再エネ拡大に取り組んできた。再エネ発電事業への融資をはじめ、再エネファンドを運営するZエナジー株式会社(東京都千代田区、2021年9月設立)ヘの出資、100%子会社の株式会社MUFGサステナブルエナジー(東京都千代田区、2023年10月設立)による各種事業、さらに再エネ需要家支援なども展開している。
また、電力ビジネスにも進出しており、2024年10月にはメガバンクとして初めて東京商品取引所(TOCOM:Tokyo Commodity Exchange)の電力先物市場に参入。さらに、卸電力のオンライン取引所運営のenechain(エネチェイン)の子会社であるeClear(イークリア)にも出資している。
今回の小売電気事業ヘの参入は、こうした取り組みに続くもの。温室効果ガス(GHG)の実質的な排出量ゼロを目指して、全世界が取り組んでいる、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて成長が見込まれるこの分野で、事業のさらなる強化を目指す。
注1:銀行法第16条の2の2「他業銀行業高度化等会社」に関する規定。これによって銀行は「自らの業務と密接に関連する事業」を行う会社を、子会社として設立・保有することが可能となった。
参考サイト
株式会社三菱 UFJ 銀行、MUFG トレーディング株式会社 プレスリリース 2025年7月1日、「MUFG トレーディング、電力小売事業に本格参入」