≪2≫NGN時代のシスコのDOCSIS 3.0の戦略
シスコシステムズ 上級プロダクトマネージャ CMTSビジネスユニット カビタ・マリアパン(Kavitha Mariappan)氏は、ケーブルネットワークの次世代高速データ通信規格「DOCSIS 3.0」の特長と、シスコのDOCSIS 3.0対応製品のロードマップ、DOCSIS 3.0を利用したケーブル事業者の今後の戦略などについて説明した。
DOCSISは、ケーブル・テレビ(CATV)のネットワークを利用してデータ通信を行うための標準規格。当初、IEEEによって「IEEE 802.14」としてケーブルモデムの標準化が行われたが、現在は、北米中心のCATVオペレータ(CATV運営会社)による非営利団体であるCable Labsで行われており、すでにDOCSIS 1.0/1.1/2.0などが標準化されている。
カビタ・マリアパン(Kavitha Mariappan)氏(シスコシステムズ 上級プロダクトマネージャ CMTSビジネスユニット)
〔1〕ケーブル事業者の競争力を高めるDOCSIS 3.0
マリアパン氏は、図3を示し、「コンシューマがコンテンツを消費するだけでなく、自ら作り出しアップロードしたり、共有したりする時代を迎え、ブロードバンドへの要求が高まっている。こうしたことを背景に、2011年には通信速度は100Mbpsが標準になるとみられる。また、コンテンツの楽しみ方も、家の中のテレビだけでなく、外出先で移動しながらでも、ケータイやパソコン、PDAなどの多様なデバイスでコンテンツを楽しむようになる。このため、ネットワークの負荷が高まり、また、時間、場所、デバイスが変わる中で、QoSを提供できるかどうかなどの課題も重要となってきている」として、FTTHなど光ファイバのサービス事業者などの競合他社との競争が激しくなることを指摘した。
実際、北米有数のMSOであるケーブルビジョンは、通信事業者のベライゾンと競合しているが、DOCSIS 3.0を導入することによって、ネットワークの通信速度でも、コストでもベライゾンや他の競合他社の優位に立っているという。
そして、「現在利用されているサービスは、データ、コマーシャル・サービス、VoIPなどだが、今後Video over DOCSISでのIPTVなど、さらに多様なサービスが要求されてくる。そして競合他社もそうしたサービスをネットワークで提供してくるなかで、当社は、ケーブル事業者をはじめとした世界中のお客様と密に連携を図り、プロダクト・ポートフォリオや製品のロードマップなどを提供して、エンド・ツー・エンドできめ細かいサービスを提供できるように、取り組んでいる」と語った。
〔2〕ケーブル事業者の競争力を高めるDOCSIS 3.0
DOCSIS 3.0は、CMTS(ケーブル・モデム終端システム ※)とM-CMTSアーキテクチャ(※)と組み合わせることで、VoDやデジタル放送サービス用に普及しているエッジQAMをデータ通信用の下りチャネルとして使用することができるため、設備投資コストを抑えられ
※CMTS:Cable Modem Termination System、ケーブル・モデム終端システム
※M-CMTS:Modular Cable Modem Termination Systems、モジュラCMTS
る。また、下り帯域増加の需要に応じて柔軟なチャネル割り当てもできる。
ではM-CMTSとはなんだろうか。従来のCMTSはQAM変調機が一体化されている。これに対し、M-CMTSでは下りの変調機を分割し、モジュールとして追加できるようになっている。このため、デジタル放送などで利用されるQAM変調機と併用し、空いているチャネルを活用したり、変調機を効率的に利用できる。
このM-CMTSによって、DOCSIS 3.0に準拠した設備のコストを下げ、需要に応じたスケーラブルな運用が可能だ。
表1に、DOCSISの特徴をまとめた。