≪1≫ケーブル業界がNGN時代に直面する危機とは
中川郁夫氏
(インテック・ネットコア
取締役 CSO)
同セミナーの中で、インテック・ネットコア 取締役 CSO(※)の中川郁夫氏は、NGN(次世代ネットワーク)時代におけるケーブル事業者のあり方として、「NGNによる通信ビジネスの変革 ~ケーブル業界が直面する脅威~」と題した講演を行った。
講演の中で、中川氏は、「NGNによってマーケット規模に対する考え方とサービスモデルが大きく変わり、その変化はケーブル(CATV)業界にも大きな影響をもたらす」として、CATV業界がNGN時代に直面する危機がどういうものなのかを提示し、課題を投げかけた。
※CSO:Chief Strategic Officer、戦略担当役員
〔1〕固定と携帯の融合 ~ネットの「入り口」の変化~
中川氏は、NGNを定義し「NGNのコンセプトは、オールIP化による、ネットワークとサービスの統合」だと述べた。中川氏によると、NGNは、次世代の通信ビジネスを示すコンセプトとしての「広義のNGN」、それを実現するための機能や仕様などを定める技術面からみた「狭義のNGN」のふたつの定義が存在する。さらに、NTTが推進しているNGNは、通信事業者による実装の一つでしかない、と説明する。
今回の講演は、広義のNGNについての分析であり、その中で、NGNでは、
(1)Business
・ビジネス構造の変革
(2)Service
・新サービスモデルへの移行
(3)Technology
・オールIPによるプラットフォーム構築
の3つの変化が起こると指摘した。
そして、NGNについての通信事業者の企業戦略上の議論のポイントとして、図7を示した。ちなみに今回の講演のテーマとなるのは、図7中の「キャリアの外部の動き(External Movement)」の「固定・携帯融合 FMC」と「価値の変化 SaaS(※)」である。
※SaaS:Software as a Service。ネットワーク経由で、ソフトウェアの機能をサービスとして提供する形態
中川氏はまず、「固定と携帯の融合」について説明した。
NGNの視点からみると、FMCとは、ネットワークの「入り口」の変化に他ならないとして、図8を示した。
従来のモデルでは、エンド・ユーザーからISPまでのアクセス回線サービスは、単にインターネット接続の一部で、アプリケーション事業者による多くのサービスはその先のインターネットで提供されていた。つまり、従来のモデルでは、インターネットが、サービスを提供するネットワークの「入り口」だったわけである。
これに対して、NGNモデルは、アクセス回線サービス自体が「入り口」となっている。NGNというアクセス回線上で、さまざまなアプリケーションやサービスが提供され、インターネット接続サービスもこうしたサービスのひとつとなる。アプリケーション事業者のサービスもこのアクセス回線サービス上で提供される。
次に、中川氏は、NGNから見たFMCの意味を次のように説明した。
「FMCとは携帯事業者によるネット市場の覇権争いだ。現在、携帯電話・PHSからインターネットを使う人は7,287万人(82.7%)、パソコンからインターネットを使う人は7,813万人(88.7%)にも及ぶ(平成19年「通信利用動向調査」より)。さらに、テレビがこれからネット端末になっていくが、テレビの普及台数は1億~1億2千万台だと言われている。通信事業者が狙っているのは、『移動=携帯電話』と『固定=パソコンとテレビ』を統合した、これまでよりも大きな1億2千万人の巨大市場を手にすることである。1億2千万人に直接リーチできる『ネットの入り口』をどのように獲得するかに、携帯電話の通信事業者はしのぎを削っている。例えば、ソフトバンク・グループの『Yahoo!』や、KDDIの『au one』だ」