土を主原料に3Dプリンターで住宅を建設
戸建住宅の販売を手掛ける株式会社Lib Work(以下、Lib Work)は、3Dプリンターを活用し、土を主原料に建設する注文住宅「Lib Earth House」のモデルハウス(model B)を熊本県山鹿市に建設した(図1)。住宅のCO2負荷を軽減するとともに、従来の建築方法と比べて柔軟かつ複雑な形状の作成が可能になるという。すでに建築確認済証を取得しており、2025年8月に予約を開始し、2026年1月に受注を開始する。2025年7月22日に発表した。
図1 土を主原料とした3Dプリンター住宅「Lib Earth House model B」の外観
出所 株式会社Lib Work PR TIMES 2025年7月22日、「国内初、土を主原料とした約100㎡の3Dプリンター住宅(一般住宅用)完成のお知らせ」
2040年までに累計10,000棟を着工予定
Lib Earth House model Bは、3Dプリンターの積層技術を活用し、住宅の壁を土、石灰、自然繊維で形成した住宅。天然素材を用いた独自の材料設計により、100平方メートル規模の住宅を建設した場合、RC(鉄筋コンクリート)造と比べてCO2負荷を約50%削減するという。
土壁は構造的に独立した自立型の外装材として設計しており、主架構には木造を使用する(図2)。この構造により、セメントは不使用ながら、セメントを一部使用していた旧モデルと比べ強度を約5倍に向上したという。主架構、外装材の土壁ともに耐震等級3相当の強度を持つ。今回の土壁開発に関わる技術について特許を出願した。
図2 Lib Earth House model Bの平面図
出所 株式会社Lib Work PR TIMES 2025年7月22日、「国内初、土を主原料とした約100㎡の3Dプリンター住宅(一般住宅用)完成のお知らせ」
壁には温湿度センサーを埋設し、住宅の劣化につながる壁内結露をリアルタイムで監視する。また、エアコンや照明、風呂などの設備を遠隔操作でき、玄関ドアには顔認証システムで鍵の開閉ができるスマートドアを採用した。家庭用蓄電池「Powerwall」(米テスラ製)と太陽光発電パネルを搭載し、オフグリッド型の電力自給体制をとっている。
設計に生成AI(人工知能)技術を活用しており、3Dプリンターによる施工と組み合わせ、完全自動住宅建設に向けた取り組みを進めるという。
3Dプリンターには、建築サイズの構造物をプリントできる「Crane WASP」 (伊WASP製)を採用した。Crane WASPは、土のほか、コンクリート、モルタル、ジオポリマーなどの材料を取り扱える。Lib Workが日本における代理店の1つになっている。
Lib Workは、3Dプリンター住宅のプロトタイプとして「Lib Earth House model A」を2024年1月に完成させ、強度や施工性、意匠性を検証してきた。そのノウハウをもとに、model Bを建設した。
今後、Lib Workは、Lib Earth Houseについて、2040年までに累計10,000棟の着工を目標としている。また、住宅分野だけでなく、グランピング施設やサウナ、ホテル、建物のファサード、商業店舗などにも展開する。さらに、独自開発した3Dプリンター住宅技術を、FC(フランチャイズ)方式で全国の住宅会社やビルダーへ展開する計画もある。アジア諸国など、住宅不足や災害時の仮設住宅を抱える国や地域への展開も進める。
Lib Workによれば、住宅業界では過去50年以上にわたり工法や素材に本質的な変化が少なく、構造的な変革が求められていた。加えて、世界的な住宅不足や建設技能者の不足、脱炭素社会の実現といった課題も深刻化している。
参考サイト
株式会社Lib Work PR TIMES 2025年7月22日、「国内初、土を主原料とした約100㎡の3Dプリンター住宅(一般住宅用)完成のお知らせ」
株式会社Lib Work PR TIMES 2024年8月22日、「3Dプリンター企業WASP社の世界初の公認ディストリビューターに選定」