[クローズアップ]

センサー/ウェアラブルデバイス/IoTとの融合で急速に拡大する位置情報ビジネス

2015/01/15
(木)

1.1 位置情報ビジネスとは何か

そもそも位置情報ビジネスという言葉に明確な定義はない。

これまでは、主にGPS(Global Positioning System)や地理空間情報を活用したタイプのビジネス全般をターゲットにしてきた。

 

古くはインターネットの地図サービスや店舗検索サービスなどから始まり、スマートフォンやSNS(ソーシャルネットワーキングサイト)、測位技術の発展によりそのターゲット範囲を拡大してきた。また、O2O(Online to Offline)市場をはじめとする新たな市場も拡大し、日々多くのサービスが生まれている。

 

近年では、さまざまなセンサーの発達や機器の小型化、省電力な近距離無線通信規格の普及などといった要因により、スマートフォンだけでなく、腕時計型のデバイスやメガネ型のデバイスといった、いわゆるウェアラブルデバイスを連携させたビジネスも生まれ始めている。

 

自動運転などの技術も進化しており、それらの多くには位置情報が大きな役割を担っているのである。

 

モノのインターネット(Internet of Things:IoT)という言葉が注目されているように、さまざまな「モノ」がインターネットに接続される世界が訪れようとしている。

 

これに従い、「モノ」が物理的にどこにあるか、どのような状態なのかといったセンサー情報は、今後爆発的に増えていく。

 

多くのものに位置情報が付与され、位置情報が世界に溶け込んでいくなか、位置情報を扱うことそのものを目的としたサービスは特別なものではなくなり、既存のビジネスや課題解決を、位置情報を使ってどのように進化させるのかという、「位置情報ありき」でない部分でサービス開発を行うことが重要となるだろう。

1.2     世界の位置情報ビジネスの市場規模

GPSデバイスやセンサーネットワークが拡大し、さまざまなビジネス分野に浸透していった結果、「位置情報ビジネス」の範囲を正確に決めることは難しい。ここでは、いくつかの分野での指標を紹介する。

ReportsnReports.com注1によると、ソリューションベースでの世界の室内測位ビジネス市場(Indoor Location Market by Solution)は、CAGR(Compound Average Growth Rate:年平均成長率)で2014年から2019年にかけて36.5%成長すると見られている。アジアパシフィックが市場を牽引し、利益面では北米がもっとも大きな市場となるとされている。CAGRの算出に利用された企業は、Apple、Google、Microsoft、Broadcom、Ciscoおよびその他の新しい技術をもったスタートアップとされている。

リサーチによると、GPS衛星の電波が届かない室内においても位置情報を把握したいというニーズは大きく、すでに実現可能な技術とデバイス自体は開発されているが、普及するにはインフラ側の負担が少ないものである必要があり、屋内測位を必要とするアプリケーションの普及率など、いくつかの要素が絡んでくるとしている。

一方、同社の別のレポート、「Global Indoor Location-based Service (LBS) Market 2014-2018」(2014年から2018年までの世界の屋内位置情報サービス市場)では、年平均成長率で2013年から2018年にかけて49.42%成長するとされている。含まれるサービスの内訳は、

(1)屋内位置情報サービスソフトウェア、アプリケーション、ミドルウェア、プラットフォームなどのライセンシング

(2)屋内位置情報サービス向けのデバイスの売上

(3)屋内位置情報サービス向けの地図およびナビゲーション、トラッキング、モニタリング、緊急サービスおよび分析

(4)屋内位置情報サービス検索および公告の利益

(5)商業施設や政府施設、公共施設、学校、医療などの重要な施設で使われる屋内位置情報サービス

となっている。

一方、BERG Insight社のリサーチ、LBS Research Series 2014(Mobile Location-Based Services Market)2によれば、位置情報サービスは、スマートフォンの普及にともなって主要な市場となっているとしている。スマートフォンの普及率は、2013年末には北米で67%、EU諸国で58%であり、EUのスマートフォンユーザーのうち50%は位置情報サービスをよく使うユーザーであると見積もられている。

北米の場合はGPS内蔵デバイスが多く、スマートフォンユーザーの60%超の人々が日常的に位置情報サービスを使っているという。このようなユーザーの増加は、特にGoogleやFacebookなどといったリーディングカンパニーの利益の大幅な成長につながっており、2013年のEU諸国内での位置情報サービス市場の利益は7億3,500万ユーロ注3となっている。また、Berg Insightの予測では、2018年には23億ユーロまで成長するとされている。北米に関しても、2013年の18億ドル4の利益から、2018年には38億ドルまで成長すると予測されている。主な収益源はソーシャルネットワークやロケーション検索内での広告であるが、モバイルで分析やロケーション広告などといったさまざまな企業向けのサービスも、向こう数年北米やヨーロッパでの市場を急激に拡大すると見られている。

また、同資料では、位置情報連動広告配信サービスについても記載されている。センサー情報の増加により、ユーザーの属性情報だけではなくリアルタイムな場所に応じた広告を配信できるようになることは、市場の拡大に大きく貢献すると考えられる。

ロケーション情報と、その他のコンテキスト情報や行動情報を加味して広告を配信することで、モバイル広告の適切性を向上させる。Berg Insightの予測によると、2013年のリアルタイムのモバイル広告市場は、全体のモバイル広告市場のうち14.5%を占める12億ユーロで、年平均成長率ベースで54.0%成長することで2018年には107億ユーロまで成長するとされている。ロケーションベース広告とマーケティングが、デジタル広告市場の7%を占める計算である。

2018年には、LBSマーケットにおいて、北米、EUに続きアジアパシフィックが最大規模となると予測されている。


▼注3
2014年12月18日現在のレートでは、1ユーロ=146円。

▼注4
2014年12月18日現在のレートでは、1米ドル=118円。

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