藤田保健衛生大学、東レ、日本電信電話(NTT)、NTTドコモの4者は2017年2月6日、人間が着用する「ウェア型生体センサー」でリハビリ患者の活動データを取得する共同実験を藤田保健衛生大学病院で実施すると発表した。実験期間は2月7日~6月30日。ただし、実験期間は延長する可能性もあるとしている。
実験には、東レ、NTT、NTTドコモが共同開発したウェア型生体センサー「hitoe」を利用する。hitoeの生地素材は東レとNTTが共同開発したもので、ナノファイバー生地に導電性樹脂をコーティングしたもの。非金属素材でありながら、着用者の生体信号を高い感度で検出できる。体表面にこの生地を密着させることで、心拍数や心電波形を検知できる。さらに、心電波形のうち「R波」の間隔から睡眠状態を推測することも可能だ。
図 ウェア型生体センサー「hitoe」。胸の部分にはトランスミッターが付いている
出所 藤田保健衛生大学
hitoeが感知した生体信号は、胸の部分にあるトランスミッターからBluetooth Low Energyで送信できる。このトランスミッターはNTTドコモが開発したものだ。トランスミッターは院内に設置したゲートウェイやスマートフォンを通して、院内無線LANに接続し、サーバーにデータを送信する。さらに、トランスミッターには加速度センサーも備わっており、着用者が転倒したり、体を大きく動かしたりしたことを検知できる。トランスミッターはリチウムイオン蓄電池で動作し、1回の充電でおよそ24時間稼働する。
図 今回の実験で使用するシステムの全体像
出所 藤田保健衛生大学
実施する実験は3種類。1つ目は健常な人にhitoeを着用してもらい、その状態で運動をしてもらう。hitoeで心拍数データを取得しながら、病院に設置してある機器で呼気のガス成分を分析する。さらに、動脈血中のヘモグロビンと酸素がどの程度結合しているのかを示す「SpO2」の値を計測する。歩行中には歩行速度や距離も測定し、hitoeで得られたデータが運動負荷をどの程度反映できているのかを確かめる。
2つ目は、藤田保健衛生大学病院のリハビリテーションセンターで実施する。リハビリテーションセンターでリハビリに取り組む外来患者、入院患者にhitoeを装着してもらい、リハビリ中の心拍データに加えて、リハビリ中に運動しているのか、安静にしているか、立位であるのか、臥位であるのかといったデータを取得してサーバーに送信する。データはサーバーにアクセスすることで、リアルタイムで確認できる。これを見ることで、担当医師は、リハビリ中の患者の体の状態を見て、さらに適したリハビリ法を考えることが可能になる。実験では、hitoeを利用したシステムがリハビリプログラムの立案、実行、患者の回復にどう影響するのかを確かめる。
3つ目は、藤田保健衛生大学病院のリハビリ科に入院中の患者に24時間hitoeを着用してもらい、入院生活で起こることをデータから確認する。患者の活動の変化によるデータの変化は看護師が携帯する端末にリアルタイムで伝わるので、転倒の危険がある患者が転倒したことをいち早く気づくことができる。また、臥床状態が長い患者に運動を促すことも可能だとしている。今回の実験では、患者の危険行動の早期検知や、入院患者の活動促進に役立つことを確かめる。
先に述べたように、実験期間は6月30日までとしているのが、実際は終了時期は未定となっている。3年後にこのシステムを実用化することを目指して、実験を継続する可能性があるという。