[標準化動向]

スマートグリッドの新プロジェクト「IEEE SGVP」が本格始動!

─デファクト標準推進を示唆するVision Paperを策定へ─
2013/01/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

世界に40 万人以上、日本国内だけでも1 万6000 人もの会員を抱える世界最大の学会組織「IEEE」が、まもなくスマートグリッドの30 年後を描いたVision Paper を発表する。これは、IEEE が2010 年に立ち上げたIEEE Smart Grid VisionProject(IEEE SGVP、IEEEスマートグリッドビジョンプロジェクト)の最初の成果物となる。Vision Paper の中身についてはその発刊を待つこととし、ここでは本格的に始動し始めたIEEE SGVP の取り組みとその狙いについて紹介する。

IEEE SGVP設立の目的

一般的に研究開発は、図1に示すように、4つのフェーズに分解できる。時間の流れに沿って、「①コンセプトレベルの研究フェーズ」「②競争前の研究フェーズ」「③競争的研究・開発フェーズ」「④開発・展開フェーズ」である。

図1 研究開発の4つのフェーズ

図1  研究開発の4つのフェーズ

前半の「①コンセプトレベルの研究フェーズ」および「②競争前の研究フェーズ」では、研究活動の活性度は低いながらも知財(知的財産権)競争の盛んな基礎研究が主となる。そして、それは大学を中心とした研究機関に牽引される傾向にある。

一方、後半の「③競争的研究・開発フェーズ」や「④開発・展開フェーズ」では、知財競争が一段落するものの実用化に向けた企業による応用研究が活発になり、国際標準化活動はこの後半のフェーズで行われることが多い。

Vision Projectでは、この典型的な国際標準化活動時期よりも早い国際標準化活動を行うことを提案し、推進している。

IEEE SGVPの重要な2つのキーワード

Vision Projectで新しい国際標準化として提案された内容には、「First-2-Market」「産学連携」という2つの重要なキーワードが登場する。

〔1〕First-2-Market:早期の市場投入

まずは“First-2-Market”、つまり「早期の市場投入」を目的とする、としている点である。

従来の国際標準化は、主に相互運用性あるいは信頼性や安全性の確保を主目的としてきたのに対し、早期の市場投入のための国際標準化を行おうというのである。そもそも、IEEEによって策定される標準規格はデファクト標準(業界標準)として、各国の協調を図るデジュール標準(国際標準)に対して、標準化プロセスにおける意思決定の早さから、早期に製品の市場投入を図る企業などによって戦略的に利用されてきた。

IEEEではその特色をさらに強化し、スマートグリッドの関連製品やシステムの早期市場投入のさらなる促進を後押しするとしている。

〔2〕産学連携

次は、“産学連携”である。IEEE-SAは前述した“First-2-Market”を、産学連携の活性化によって実現する。そのためにIEEEという世界最大の研究組織を活用するとともに、新たにさまざまな産学連携プログラムを準備している。相互運用性が目的ではなく、早期の市場投入が目的であるこの標準規格は、規格開発プロセスが戦略的である点も興味深い。

従来の国際標準化は、「競争的研究」「開発フェーズ」以降、

(1)Study Group(SG、調査グループ)で議論した後、

(2)Working Group(WG、作業グループ)で実際の標準化を行う

という2つの工程に従って進められていた。このため、これまではIEEEが抱える40もの巨大な数のソサイエティ(部門)において、前半の2つのフェーズ、つまり「①コンセプトレベルの研究フェーズ」と「②競争前の研究フェーズ」における議論を取り入れるプロセスが欠落していたとも言える。

新設された研究グループ(RG:Research Group)

そこで、その前段階として、図2に示すように、新たに研究グループ(RG:Research Group)での検討段階を設けてIEEE規格開発プロセスにおける新しい工程として位置付け、標準規格策定の機会を早期に発見することが検討された。また、この新しい標準化活動を推進する活動組織を研究フォーラム(RF:Research Forum)と呼び、Vision Projectのスタート地点とした。

図2 Vision Projectから標準化への流れ

図2  Vision Projectから標準化への流れ

研究フォーラム(RF)の目的は、特定領域技術との関連や、動向、開発といった進捗状況を明確化することである。現在、スマートグリッドに関するビジョンプロジェクト(SGVP)の活動が実際に進められ、Vision Paperの原稿の取りまとめが行われている状況である。


▼ 注1
IEEE:The Institute of Electrical and Electronic Engineers(アイ・トリプル・イー)、米国電気電子学会。

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