[再生可能エネルギーと電力システム技術]

再生可能エネルギーと電力システム技術

─第2回 太陽光発電の出力変動への対策─
2013/03/01
(金)

制度面の再構築

日本の電力システム(電力系統)は、図5に示すように、複数の一般電気事業者がくし形(団子をくしで刺した状態)に連なった形状を呈している。同一周波数(例:50Hzの周波数)の電力システムに関しては、各地域間は「地域間連系線」注5を介して相互接続され、互いに電力融通が実施できる体制が取られている。なお、海外では地域間の連系が図5右に示すように密(ループやメッシュ構成を含む)であるため、ループフローなどの問題がある。この点に関しては、次々回以降に述べる。

図5 日本の電力システム(くし形)と欧州の電力システム(メッシュ状)の違い

図5  日本の電力システム(くし形)と欧州の電力システム(メッシュ状)の違い

〔出所 次世代送配電ネットワーク研究会「低炭素社会実現のための次世代送配電ネットワークの構築に向けて〜次世代送配電ネットワーク研究会 報告書〜」、2010年(平成22年)4月〕

LFCに関しては、多くの電力会社は自地域内で生じた需給バランスの変動量を推定し、これを補償するように発電機群の出力調整を実施している(TBC方式注6)。

この場合、再生可能エネルギーによる電源の出力変動は、同じ地域内の供給力の調整で補償される必要がある。したがって、予想される出力変動の大きさに応じて、地域内の同期発電機群は(第1回で解説した通り)変動補償のために大きな予備力を確保しなければならない。例えば、太陽光発電出力が急激に減少する場合でも、同期発電機群が出力を十分に上昇できるように、定格出力に比較して低い出力で待機する必要がある。必要な予備力の量が大きいほど同期発電機の発電効率は低下するため、電力供給の経済性は損なわれることとなる。(第3回につづく)

Profile

辻 隆男 (つじ たかお)

辻 隆男 (つじ たかお)

横浜国立大学 大学院工学研究院 知的構造の創生部門 准教授

1977年11月22日生まれ

2006年3月 横浜国立大学 大学院工学府物理情報工学専攻 博士課程後期修了

同年4月 九州大学 大学院システム情報科学研究院 電気電子システム工学部門 寄附講座(九州電力)教員

2007年4月 横浜国立大学 大学院工学研究院 知的構造の創生部門 助教に着任

2011年4月 同准教授、現在に至る

博士(工学)

主として、電力システムの運用・制御・解析に関する研究に従事


▼ 注5
地域間連系線:電力会社間で、電力を相互に融通し合うために敷設された送電線のこと。災害などによって、発電所が停止した場合に、その地域の電力不足を補うための電力融通が可能となるため、電力供給の信頼度を向上する効果がある。また、地域間の電力取引が可能となるため、電力供給の経済性向上にも寄与する。ただし、連系線の敷設には高コストを要するため、費用対効果を考えて適切な容量が検討されている。

▼ 注6
TBC方式:Tie line Bias Control(またはTie line load frequency Bias Control)、周波数バイアス連系線潮流制御方式。

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