水素混焼発電の環境価値を管理する実証を開始
関西電力株式会社(以下、関西電力)は、BIPROGY株式会社(以下、BIPROGY)、川崎重工業株式会社(以下、川崎重工)と共同で、水素混焼発電の環境価値を管理する実証を2025年8月22日から開始する。出自の異なる複数の水素を対象にCO2排出量を追跡・記録し、水素混焼発電による電力の由来を識別する技術を確立するのが目的(図1)。同8月19日に発表した。
図1 関西電力、BIPROGY、川崎重工による実証の概要
出所 関西電力株式会社 プレスリリース 2025年8月19日、「水素混焼発電における環境価値管理に関する実証開始」
由来の異なる水素のCO2排出量を管理
3社の実証は、製造の方法や場所が異なる水素の由来情報を追跡し、そのCO2排出量に基づいた環境価値を、最終的に発電された電力に紐づけるプロセスの確立を目的とする(図2)。
図2 水素のCO2排出量算定と追跡・記録の流れ
出所 関西電力株式会社 プレスリリース 2025年8月19日、「水素混焼発電における環境価値管理に関する実証開始」
実証では、姫路第二発電所エリア内で製造される低炭素水素、福井県産の原子力由来低炭素水素、山梨県産の再エネ由来グリーン水素の情報を収集する。この段階では関西電力が、各水素の製造プロセスにおけるCO2排出量算定の基礎となる各種データを情報集約装置で収集し、整理・導出する。
収集したデータは、BIPROGYの「環境価値管理プラットフォーム」と川崎重工の「水素プラットフォーム」へと送られる。これら2つのプラットフォームがAPIで連携し、水素のCO2排出量の算定と由来情報の追跡・記録を30分単位で実行する。この連携システムにより、出自の異なる水素が混合された後でも、それぞれのトレーサビリティを確保する。
最終的に水素を姫路第二発電所のガスタービンで混焼発電に利用する。その際にプラットフォーム上の追跡データを活用し、発電された電力が「どの由来の水素を、どれだけの比率で使用したものか」を明確に識別できるかを検証する。これにより、電力の利用者に対し、その電気が持つ環境価値を客観的なデータに基づいて示すことが可能になるという。
同実証は、トラッキング方法の信頼性を担保するため、国際的な第三者認証機関であるDNVの支援を受け、採用する方法が国際規格に則ったものであるかを客観的に検証する。
今後、関西電力、BIPROGY、川崎重工は、実証で得た知見をもとに水素発電における環境価値管理モデルの構築を目指す。将来的には、水素の製造エネルギー源や製造時間・場所といった由来を明らかにした電気を提供する計画である。さらに、今後の事業化に向けた共同検討を進める。