「ZigBeeフォーラム2013 Osaka」で注目された2つの発表
去る2013年2月22日、大阪の梅田スカイビルにおいて、ZigBee標準の普及を促進するため、恒例の「ZigBeeフォーラム2013 Osaka」(セミナーと展示会)が開催された。例年は東京で開催されるが、今年は初めて大阪で開催された。200名の会場は満席となり、大阪においてもZigBeeへの注目度の高さが伺えた。そのようななか、今年は注目すべき発表がいくつか行われた。
〔1〕ZigBee IP 1.0とJJ-300.10が近日公開へ
最初に、基調講演を行ったZigBee Allianceのボブ・ハイル(Bob Heile)名誉会長注1から、「ZigBee IP 1.0の完成と近日公開」が世界に先駆けて発表された。さらに、2人目の基調講演を行ったTTC次世代ホームネットワークシステム専門委員会の伊藤昌幸委員長から、注目されている「TTC標準JJ-300.10注2の近日公開」が発表された。
ZigBee IPは、スマートハウス向けにIPv6プロトコルに対応したオープンなZigBee規格である。IPv6対応とすることによって、既存のIPシステムとの親和性が高くなり、普及が促進されると期待されている。すでに、米国商務省傘下のNIST(国立標準技術研究所)がスマートハウスの標準として利用することを決めている規格である。
〔2〕920MHz ZigBee IPはTTC標準JJ-300.10の方式Bへ
このZigBee IPを、日本の920MHz帯で利用できるように修正したものが「920MHz ZigBee IP」であり、現在ZigBee Allianceで審議が進められている。その日本語版が、TTC標準JJ-300.10の方式Bとして公開されることになった。ZigBee SIGジャパンのアプリケーションWGの福永茂リーダーによると、「ZigBee Allianceの規定により、3社以上の相互接続確認ができるまで規格を公開できないが、HEMSの立ち上がりが期待される日本市場に向けて、TTC標準JJ-300.10として先行して公開する」ということである。
920MHz ZigBee IP上にECHONET Lite走らせ相互接続デモ
また、今回のフォーラムでは920MHz ZigBee IPを用いてECHONET Liteを伝送する「ECHONET Lite over 920MHz ZigBee IP」による相互接続デモが公開された(写真1)。
写真1 「ECHONET Lite over 920MHz ZigBee IP」による相互接続デモの外観
このデモは、OKIとアドソル日進という異なる2社間で行われた。920MHz ZigBee IPの相互接続デモは初公開であったが、今回のデモではさらにECHONET Liteも搭載したエアコンの制御や電力量測定なども行われた。
ECHONET Liteは、HEMS(家庭用エネルギー管理システム)のアプリケーション・インタフェースとして経済産業省が推奨する方式であり、下位の伝送メディアを特定しないのが特徴である。
これまでEthernetやWi-FiによるECHONET Liteの動作例は報告されているが、920MHz帯を利用してIPv6対応のネットワークを実現し、相互接続した例は初めてである。JJ-300.10には、ZigBee IPのほかに、Wi-SUNが規定するIP方式/非IP方式などが規定されている。今回のデモを通して、参加者に920MHz ZigBee IPが実用のレベルまで達しているとの印象を与え、その完成度に会場から期待が集まっていた。
今回のデモのシステム構成
今回のデモのシステム構成は、図1のとおりである。相互接続デモに参加したOKIとアドソル日進が、それぞれ920MHz ZigBee IPとECHONET Lite対応の通信機器を担当したシステム構成となっている(写真2、写真3)。会場のデモでは、ECHONET Lite Ready機器(ECHONET Lite対応)の実際のエアコンにECHONET Liteアダプタを接続し、サービスゲートウェイを経由して、タブレットのユーザーインタフェースから温度や風量を制御するデモを行っていた。
図1 920MHz ZigBee IP over ECHONET Lite相互接続デモの構成図
〔出所 ZigBee SIGジャパン〕
写真2 OKIのECHONET Lite対応の920MHz ZigBee IP関連機器
写真3 アドソル日進のECHONET Lite対応の920MHz ZigBee IP関連機器
また、電力量センサーの情報をタブレットに送信する、いわゆる「電力の見える化」の構成も展示された。簡単なネットワーク構成によるデモであったが、ECHONET Liteが目指すHEMSの基本構成システムを、920MHz ZigBee IPによって動作させ確認できた意義は大きい。
今後、より多くの企業による相互接続性の確認が行われ、920MHz ZigBee IPが市場へ大きく普及することが期待されている。
▼ 注1
Heile氏はZigBee Alliance創設以来会長を務めていたが、2013年2月11日に名誉会長に退き、チーフテクノロジストを兼務。後任の議長には、Tobin Richardson(トビン・リチャードソン)氏が任命され、CEOも兼務する。
▼ 注2
ECHONET Lite向け920 MHz帯無線方式の標準規格。下記にて公表されている。
http://www.ttc.or.jp/j/info/topics/201302251/