BEMSアグリゲータの連携
BEMSアグリゲータの連携
日立製作所では、異なるBEMSを統合管理する階層的なエネルギー情報基盤となるシステムを構築した。これによって、電力会社とBEMSユーザーである事業所のエネルギーデータを連携することができるようになり、「省エネ」「見える化」「制御」だけでなく、電力逼迫時のデマンドレスポンス(電力の需給制御)にも対応可能となる。
図6は、日立のエネルギー情報サービス基盤のイメージ図である。
図6 日立製作所が構築したエネルギー情報基盤のイメージ図
今後のBEMSアグリゲータビジネスの課題と将来への展開
BEMSアグリゲータには大きく2つの役割が求められている。
1つは、BEMS導入事業者の賢い省エネを支援することである。
中小の事業者では、省エネを推進するための組織や人材が不足しており、省エネが有効に進められていないケースが見受けられる。そのためBEMSアグリゲータは事業者の省エネ課題を見つけて、「見える化」「機器の自動制御」「仕組み作り」と、さまざまな角度から適確な助言と指導を行う。さらに、事業者のエネルギーデータを効率よく分析・評価し、省コストで事業者に提供していくサービスへと発展していくことが期待されている。
2つ目は、BEMSから集約された膨大なエネルギー情報を活用した新しいビジネスを起業させることである。
例えば、電力会社の電力が逼迫した際に、BEMSを導入した事業者に協力を求め、一時的に電力使用量を制限することで、電力会社ごとのピーク電力削減に寄与し、電力会社からのインセンティブ(協力報酬金)を受け取って事業者に届けるなどの新しいビジネスモデルが、すでに検討されている。同様に、地域や企業グループ単位でのピーク電力抑制、省エネのアウトソーシング、気象条件を加味した電力予想サービス、エネルギー原単位を活用した経営支援サービスなどが検討されている。
このように、従来は活用されていなかったエネルギー情報を、インターネット環境に持ち出すことで、膨大なデータ活用の場が拓けてきたのだ。今後、このようなデータを活用した新たなビジネスモデルが、次々に生まれてくることが期待されている。
日立製作所は、BEMSアグリゲータビジネスを通して、多数のBEMSを提供し、さらにBEMSのデータを分析した省エネ支援サービスを提供するとともに、将来に向けて、集約された膨大なエネルギー情報を有効活用するエネルギー情報基盤作りに取り組んでいる。
(以下は、コンソーシアム構成会社やサービスなどの詳細:http://www.hitachi.co.jp/Div/omika/product_solution/energy/smatrgrid/consumer/bems.html)
Profile
加藤 裕康(かとう ひろやす)
株式会社日立製作所
インフラシステム社 電力システム本部 社会情報システム部
環境情報管理システムの構築、クラウド型のエネルギー情報サービス業務に従事。現在、日立製作所を代表幹事とするBEMSアグリゲータコンソーシアムの事務リーダーを務める。技術士(機械)、エネルギー管理士。
関連記事
電力自由化時代の「MaLion BEMSクラウドサービス」の展開
2014年5月1日 0:00
IEEE 1888を使ったNTTデータカスタマサービスの「RemoteOne」
2012年12月1日 0:00
VPP実証事業2019年度の成果と2020年度の展望
2020年5月9日 0:00
大塚商会がスマートグリッド用新プロトコル『IEEE 1888』で世界初の「見せる化」システムを構築=電力消費で、25%の大幅な節電を実現=
2011年9月20日 0:00
V2Gを実証した2018年度のVPP構築実証事業の成果
2019年5月1日 0:00
ビジネスフェーズに突入した日本のVPP(後編)
2019年1月8日 0:00
筆者の人気記事
デマンドレスポンスにおける「価格弾力性」
2013年6月1日 0:00
3.11震災時にも発電し続けた「仙台マイクログリッド」
2014年6月1日 0:00
東京電力のスマートメーター「入札延期」の真相とオープン化・国際標準化への新戦略 ─前編─
2012年11月1日 0:00
急浮上する高速/低速PLC標準規格の 最新動向 ─後編─
2013年5月1日 0:00
東京電力パワーグリッドとNExT-e Solutions 協業に合意、蓄電池再利用プラットフォームの構築を目指す
2019年7月18日 0:00
ソフトバンク、Aeris社とIoTやテレマティクスのサービス構築を支援する合弁会社を設立
2016年7月14日 0:00