[クローズアップ]

新しい市場の開拓を目指す日立のBEMSアグリゲータビジネス

2013/08/01
(木)

BEMSアグリゲータコンソーシアムにおける日立のサービス事例

次に、日立製作所の主なBEMS用サービスを紹介する。

統合型ファシリィティマネージメントソリューション「BIVALE」
= 対象事業所:主として中小ビル向け =

「BIVALE」(ビヴァーレ)は、ビル管理業務を支援する統合型ファシリティマネジメントソリューションである(図2)。

図2 BIVALE(ビヴァーレ)の特長

図2 BIVALE(ビヴァーレ)の特長

エネルギー管理のみでなく、ビルの設備やセキュリティ管理を、クラウドコンピューティングを活用して支援する。クラウド方式を採用したため、事業者にとって必要なサービスから始められ、将来的には順次拡大することが可能となっている。

エネルギー管理サービスは、ビルやフロア、あるいは空調や照明機器などの計測範囲の広さや、月単位や時間単位など、計測データの時間の細かさを指定してデータを閲覧できるため、どこに無駄があるのか見つけやすくなっている。さらに、人手や知識がなく省エネが進まない事業者に対して、長期予報を利用した負荷予測をして、パッケージ型エアコンを1カ月の電気使用量が目標値以内に収まるように運転するなど、自動で省エネ・節電制御を行う。パッケージ型エアコンとは、空調に必要な機能をコンパクトに纏め、中規模の建物や特定エリアの冷暖房に使われるエアコンのことを言う。

このシステムを導入したビルオーナーやビル管理者、テナントは、自分の目標値と実績値を比較して確認することができるため、次の対策へとつなげることができる。

「EcoAssistテナントエネルギーサービス」
= 対象事業所:テナントビルや大規模商業施設のテナント向け =

テナントビルに入居するテナントに向けて、エネルギー使用量の見える化画面を提供するクラウドサービスである。

このサービスの特長は、既設のBEMSや自動検針システムにゲートウェイ機器を接続し、クラウドサーバに電気使用量などの計測データを送信して、インターネットからデータを閲覧することができることである。ビルの省エネ推進にはエネルギー使用量の6〜8割を占めるテナントの協力が不可欠である。

このサービスは、テナントの省エネ推進を後押しする機能として、

  1. 業種や用途別のエネルギー使用状況をランキング形式で確認できる「省エネランキング機能」
  2. 年度目標値を事前設定し、現在の推進状況を確認する「目標値管理機能」
  3. 電力使用量状況をリアルタイムに確認でき、目標ラインを超過すると警告発信する「デマンド管理機能」

などがある(図3)。

図3 EcoAssistテナントエネルギーサービスのテナント向け見える化画面

図3 EcoAssistテナントエネルギーサービスのテナント向け見える化画面

省エネ支援サービス「エコポンパ」(ECO・POM・PA)
= 対象事業所:主として独立型店舗、オフィス向け =

「エコポンパ」(ECO・POM・PA)は、電力使用量や室内温度などを、直感的なインタフェースの専用表示端末を提供し、わかりやすいグラフィカルな画面でリアルタイムに表示するサービスである(図4)。

図4 エコポンパ(ECO・POM・PA)のシステムイメージ図

図4 エコポンパ(ECO・POM・PA)のシステムイメージ図

電力使用量が設定した目標値に近づくと、専用表示端末にアラート画面を表示して注意を促すとともに、省エネのための適切な行動アドバイスを併せて表示する。このアラートは専用表示端末の画面表示だけではなく、メロディやメールでも通知できる。

空調自動制御では、温度センサーと連動して暖めすぎや冷やしすぎを防ぎ、デマンド(需要)目標値を超えそうになると、空調機ごとに自動で室外機を制御してデマンドを抑制(デマンドレスポンス)する。また、昼休みや終業時間など、任意に設定した時刻になると、自動で室内機をオフして無駄を削減するスケジュール制御にも対応している。

測定範囲やセンサー数は、顧客の条件に合わせて自由に設定でき、センサーは無線または有線から選べるので、柔軟なシステム構成が可能となっている。

自動電力削減システム「PN-XERO」= 対象事業所:パッケージ空調設備をもつ中小店舗向け =

このシステムの特長は、温度センサーの適確な配置により、環境維持と設備保全に配慮しながら大幅な省エネを実現できることである。

空調機は室温センサーを内蔵しているが、天井で吸込む空気の温度を測っているため、人間の行動空間の温度より温度を高く感じ、まだ冷えていないと判断して運転を続ける。このようなことから、人間の行動空間の室温は設定値と異なって低くなってしまうのである。

このようなことを避けるため、このシステムでは室内のきめ細かな温度計測データを使うことで、目標値に向けた高精度な電力制御が可能となっている。また、不稼働時間帯を表す時間帯別、エリア別温度情報、空調機の稼働状況といった時間帯別の空調機稼働情報を登録し、この情報をもとに空調機の運転等を制御して、電力制御や省エネを図ることもできる。

図5に、PN-XEROの空調制御イメージ図を示す。

図5 PN-XEROの空調制御イメージ図

図5 PN-XEROの空調制御イメージ図

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...