[特別レポート]

制度化進む日本のローカル5G

― ローカル5G免許申請の最新状況とガイドラインの概要 ―
2020/01/31
(金)
威能 契 インプレスSmartGridニューズレター編集部

図3 ローカル5Gの利用イメージ

出所 「ローカル5Gの概要について」務省総合通信基盤局 電波部、2019年9月11日

ローカル5Gシステムの構築は導入当初はNSA(Non Stand Alone)

 5Gについては、導入当初は、4Gのインフラ(4Gコアネットワーク)を基盤として動作する無線アクセスネットワーク(NSA:Non Stand Alone)で運用が開始される。その後、5Gコアネットワークが導入され、すべて5G環境で動作する無線アクセスネットワーク(SA:Stand Alone)に移行するシナリオである。ローカル5Gについても、当初の段階ではNSAと同様のシステム構成を実現し、動作できるようにする。

 4Gのインフラをベースとしたローカル5Gシステムの構築イメージを、図4に示す。

図4 4Gのインフラをベースとしたローカル5Gシステムの構築

BWA:Broadband Wireless Access、広帯域移動無線アクセス。BWAは、移動通信に対応した全国規模のサービスを提供する「全国BWA」と、地域に密着した固定無線サービスを行う「地域BWA」が設定されている(2007年に制度化)。地域BWAとしてCATV会社などが利用してきた2.5G帯についても、この帯域が使われていないエリアにおいて、自営BWAとして限定されたエリアで4G(LTE)での利用を前提とした免許の付与が始まっている。
出所 「ローカル5Gの概要について」務省総合通信基盤局 電波部、2019年9月11日

ケーブルテレビ(CATV)事業者は地域発展の担い手になるか

 ローカル5Gは、地域や産業の多様なニーズに応じて、自治体や企業などが自ら主体となって個別に利用できる5Gネットワークである。特に、地域メディアであるCATV事業者は、大容量で双方向の自前のインフラを活用できるため、ローカル5Gを用いた地域発展の担い手としても期待されている。

 そのような中、2019年12月24日、住友商事(本社:東京都千代田区)、インターネットイニシアティブ(IIJ、本社:東京都千代田区)とCATV各社注4、地域ワイヤレスジャパン(RWJ、本社:東京都千代田区)は、ローカル5Gの活用を目的とした無線プラットフォーム事業の展開のため、株式会社グレープ・ワン(以下「グレープ・ワン」)を立ち上げ、2020年3月以降、日本ケーブルテレビ連盟と連携し、CATV事業者向けの各種サービスの提供を開始することを発表した注5

 新会社は、ケーブルテレビ事業者向けに、無線サービスにおける基幹システムとなる無線コアネットワークを構築して回線サービスを提供するとともに、基地局や端末の販売・運用・保守など総合的にサービス提供を行い、事業者の設備投資や運用面での負担軽減に貢献するとしている。さらに、将来的には、ケーブルテレビ事業者以外の企業や自治体向けにサービスの拡大を目指す。

ローカル5Gは幅広い産業を活性化

 限定されたエリアに構築したネットワークは、データ漏洩のリスク回避ができ、公衆網における障害や混信の影響を受けない。また、所有者の都合に合わせて無線ネットワークの設計や品質管理が自由にできるなどの利点がある。

 ローカル5Gを利用した、今後登場してくる新しいサービスは、幅広い産業を活性化する可能性を秘めている。


注4
CATV各社とは次の5社を総称している。ZTV(本社:三重県津市)、愛媛CATV(本社:愛媛県松山市)、秋田ケーブルテレビ(本社:秋田県秋田市)、ケーブルテレビ(本社:栃木県栃木市)、多摩ケーブルネットワーク(本社:東京都青梅市)。

注5
https://www.iij.ad.jp/news/pressrelease/2019/1224.html

 

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