急成長する3GPP準拠の5G市場動向
〔1〕急増している5Gのシェア
現在注目されている3GPP準拠の5G(第5世代移動通信システム、パブリック5Gとも呼ばれる)は、2019年4月、世界で初めて米国と韓国からスマートフォン向け商用サービスが開始された。
これを皮切りに5Gはグローバルに展開され、2020年3月には、日本のNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が、5GのeMBB(高速大容量)を実装した5G商用サービスを開始した。楽天モバイルは、2020年9月30日から5G商用サービスを開始した。
モバイル機器や通信インフラなどを提供する国際業界団体「GSA」によれば、2020年7月末までに合計392の事業者が、すでに世界の126市場(国や地域)で5Gへの投資を発表している。そのうち合計92の事業者が、世界38市場(国や地域)で5Gの商用サービスを開始している注3。
一方、世界中のモバイル通信事業者(800社)などで構成される国際業界団体「GSMA」(GSM Association、GSM協会)が、毎年発行するレポート「The Mobile Economy 2020)」注4によれば、5年後の2025年の世界の全モバイル接続のうち、4Gは依然として56%と過半数を占めるが、5Gのシェアは20%に拡大し、以降急増していくと予測されている(図1)。
図1 5Gは2025年には20%の市場へと拡大(セルラーIoT接続を除く)
〔2〕5Gのアジアと日本の動き
アジア地域を見てみると、韓国の5G加入者数は2020年5月で680万に達し(科技情通部推計)、中国は2020年7月に5G基地局が41万カ所まで設置され、5G端末は世界最大の6,600万台(同年6月末。工業情報化省)が稼働中となっている。
日本は、現在5G市場が拡大しているところで、国内4社の2020年度5Gサービス累計契約数は1,185万と予測されている注5。
さらに2019年12月24日から、企業や地域・自治体が主体となり、通信事業者が全国的に展開している5Gの商用サービス(パブリック5G)仕様をベースに構築する、自営網(プライベート5Gネットワーク。いわゆるローカル5G)の免許申請が開始された。
〔3〕3GPPにおける5G標準化の動向
パブリック5Gの商用サービスは、国際的に加速し勢いを見せているが、一方、5Gの標準仕様を策定している3GPPは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、当初の計画からその作業が延期されている。
図2および表1に示すように、5Gのフル仕様(5Gコアネットワーク仕様等)を策定している3GPPリリース16は、当初は2019年12月に完了する予定であったが2020年6月に延期された。
図2 3GPPによる5G関連リリース16、17の展開
出所 アンリツ、「ローカル5G市場動向と導入課題解決へのアンリツの貢献」(2020年8月25日)をもとに編集部で一部加筆・修正
表1 5Gの標準仕様を策定している3GPPのリリース状況と「NSA」「SA」
出所 各種資料より編集部で作成
その次の3GPPリリース17は、2021年12月の完了予定となっている注6。
▼ 注1
3GPP:Third Generation Partnership Project、スリージーピーピー。移動通信システムの標準仕様を策定する国際組織で1998年12月に設立。これまで3G(W-CDMA)、4G(LTE)、5G(NR:New Radio)などの標準仕様を策定してきた。当初、3G(W-CDMA)の標準仕様策定のために設立された経緯から「Third Generation」(3G)という名称となっている。
▼ 注3
GSA(Global mobile Suppliers Association、グローバルモバイルサプライヤー協会)が2020年8月に発表した「5G Market Snapshot August 2020」。GSAサイトに登録すると、無料で閲覧が可能となる。
▼ 注4
「The Mobile Economy 2020」(2020年3月発行)