[特別レポート]

[インテル エネルギーフォーラム2020レポート]インテルが推進するDcX戦略

― 「2025年の崖」を超え、攻めのビジネスを ―
2020/08/06
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

デジタル・デバイドとデータ・デバイド

〔1〕COVID-19パンデミックで起こったデジタル・デバイド

 データ・デバイド以前に起こったデジタル・デバイド(情報格差)について、鈴木氏は、最近、日本が直面した例について、次のように述べた。

「新型コロナ禍に伴いニューノーマルといわれ、例えば、企業ではリモートワーク、学校ではオンライン教育に取り組むことなどが多くなってきました。しかし、いざ取り組んでみると、人材不足やIT機器の利用や普及の面から、世界のいくつかの国から大幅に遅れていることを、感じた方がいたのではないかと思います。これがまさに、デジタル・デバイドの身近な例なのです。」

〔2〕データ・デバイドを回避する企業活動

 GAFA注4などのIT企業の登場によって、豊富で使いやすい情報サービスやアプリケーションが続々と提供されてきたことで、このようなデジタル・デバイドは縮小し、これは今後も継続的に展開されていく。

 しかし、前述したように、今後、大量に創出されるデータは、AIなどによるビッグデータの解析技術や、エッジ/クラウドコンピューティングなどの環境下で、爆発的に流通するようになる。

 鈴木氏は、「今後は、新たに大量に発生するデータを、いかに賢くかつ効果的に活用するかが企業競争の優位となります。このようなデータ・デバイドによって、大きな企業格差が発生しないようにすることが重要となります」と語った。

電力業界が迎えた壁:4つの事象

 ここまで述べたような新しいデータセントリック時代を迎え、鈴木氏は、今回のイベントの中心テーマでもある日本の電力業界の現状について、図2を示しながら、電力業界が迎えている壁について4つの事象を挙げ、次のように分析した。

 ①人口減少による電力消費の低下が進むこと

 ②拡大する新エネルギー(再生可能エネルギー)などへの対応が求められること

 ③インフラ(電力設備)の老朽化と人材の高齢化への対応が必要になること

 ④激化する競争とコストの拡大に対応すること

 以上のような電力業界が迎えている壁を解決するには、「デジタル化によって、業務の効率化と全体最適化を図るため、今後、電力業界において、オープンデータ・プラットフォーム(共通基盤)が重要です」と述べた。

図2 電力業界が迎えた壁:4つの事象

図2 電力業界が迎えた壁:4つの事象

出所 インテル株式会社 代表取締役社長 鈴木 国正、「インテル エネルギーフォーラム2020開会の挨拶」、2020年7月22日

インテルが提唱する電力業界も含めたDcX戦略

〔1〕データの価値を中心に据えたDcX

 現在、広く普及しているDX(デジタルトランスフォーメーション)は、企業の基幹情報システムの刷新から、データの取り扱いまで、幅広く、かつ包括的なデジタル改革を目指している。

 これに対して、インテルは、DXの中でも、とくにデータの価値を中心に据えた、「DcX(Data centric Transformation)」(データセントリックトランスフォーメーション)という戦略を推進している。このDcXによって、データの価値を最大限に引き出し、守りだけでなく攻めのビジネスモデルを構築するという狙いである。

 すなわち、DcXは、DXの守備範囲をもう少し狭めて、データにフォーカスした形でビジネスを推進する変革である。

 鈴木氏は、「インテルは、あえてDcXを意識し、データを中心に据えた攻めのビジネスを展開していきたい」「価値あるデータは、先に述べたGAFAだけでなく、それぞれの企業ももっています。それらのデータを今後、産業内のセクター(業種)を超えて連携させるなど、ビジネスに向けてダイナミックに活用していくことが必要だと思います」と強調した。

〔2〕インテルの強みとDcXソリューション

 インテルは、現在、半導体製品から、ソフトウェア、データソリューション、ビジネスソリューションなど幅広い領域でDcXを推進している。インテルは、

  1. AI、IoT、5Gからエッジ、クラウドのソリューションに至るまで、これらに対応する製品への開発投資を継続的に行っていて、高い技術力もっていること
  2. あらゆる業種・業態とのネットワークによって集約された知識を背景に、中立的な立場で、企業間をつなぐ仲介役(マッチメーキングハブ)ができる立場にいること

など、業界の重要なポジションにいる。

 鈴木氏は、「この背景には、インテルの半導体がIT機器をはじめエネルギー関連機器、医療関連機器などに広く採用されていること、さらに多種多様なお客様にご利用いただいていることが挙げられます」と述べ、「DcXを軸にして産業全体が成長・発展していくことが、インテル自身の成長にもつながっていくのです」と続けた。

DcXの基盤となる製品ポートフォリオ

 現在、インテルは、①データ移動の高速化、②より多くのデータの保存、③あらゆるデータの処理など、DcXを推進する基盤となる3分野の製品ポートフォリオを提供している(図3、図4)。

図3 インテルのDcXの基盤となる製品ポートフォリオ

図3 インテルのDcXの基盤となる製品ポートフォリオ

出所 インテル株式会社 代表取締役社長 鈴木 国正、「インテル エネルギーフォーラム2020開会の挨拶」、2020年7月22日

図4 OPTANEの製品例:インテルOPTANEパーシステント・メモリー

図4 OPTANEの製品例:インテルOPTANEパーシステント・メモリー

出所 https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/products/memory-storage.html

 鈴木氏は、これらの製品を提供するとともに、「セキュリティ/ソフトウェアを充実させ、システムレベルで最適化するという課題を継続的に行い、これらに関する投資を今後も積極的に続けていきます」と語った。

「中立性」を活かして業界横断的ビジネスを展開

 インテルは、インテルの強みである「中立性」を活かして、図5に示すように、電気・ガス・水道をはじめとして、情報通信から健康・医療・介護に至るまで、いろいろな業種とつながり、幅広いビジネスを展開している。

図5 「中立性」を活かして業界横断的にビジネスを展開

図5 「中立性」を活かして業界横断的にビジネスを展開

出所 インテル株式会社 代表取締役社長 鈴木 国正、「インテル エネルギーフォーラム2020開会の挨拶」、2020年7月22日

 鈴木氏は最後に、「図5に示すように、いろいろな業界を超えて連携し、業界発展のお手伝いをしていきたいと願っています。これらを通して、人と人、人と企業、企業と企業のつながりを念頭に入れながら、インテル エネルギーフォーラム2020のテーマである「繋ぐ」(TSUNAGU)を実現していきます」と締めくくった。


▼ 注4
GAFA:ガーファ。米国の4つのIT企業「Google、Apple、Facebook、Amazon」の頭文字をとってつけられた造語。GAFAは、インターネット上で商品やサービス、情報提供する環境(サービスの基盤。いわゆるプラットフォーム)を形成しているところから「プラットフォーマー」とも呼ばれている。

◯本イベント「インテル エネルギーフォーラム2020」は、2020年9月末までオンデマンド配信している。希望者は、登録サイトに新規登録すると無料で視聴できる。

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