ソフトウェア開発/テスト/運用を革新するテクノロジー
業界最大規模のITアドバイザリー企業、米国Gartner社の日本法人であるガートナージャパン株式会社 (以下、ガートナー) は、AI時代の到来を背景に「ソフトウェア・エンジニアリングのハイプ・サイクル:2023年」(図)に関するプレスリリースを12月4日に発表した。
これはソフトウェア開発/テスト/運用に関して、今後重要になると予測される最新テクノロジーの数々をハイプ・サイクル注1(Hype Cycle、ハイプ曲線。後述)にまとめたもので、ガートナーではこれらテクノロジーがソフトウェア開発のライフサイクルを革新し、それによって企業のビジネスモデルの刷新や新たな戦略策定に大きな影響を及ぼすだろうと述べている。
例えば図に示すハイプ・サイクルには、最近話題を呼んでいるオープンAI(OpenAI)が開発したチャットGPTなどの普及によって、「生成AI」(チャットGPTは生成AIのアプリケーションの1つ)が図の頂上付近に位置していることが示されている。
図 ソフトウェア・エンジニアリングのハイプ・サイクル:2023年
[出典:Gartner(2023年12月)]
出所 ガートナージャパン株式会社 ニュースリリース 2023年12月4日、
Gartner、「ソフトウェア・エンジニアリングのハイプ・サイクル:2023年」を発表
−AIに関するプラクティスやプラットフォーム・エンジニアリングは、2〜5年以内にソフトウェア・エンジニアリングにおける主流の採用に
AIコーディングは2027年までにエンジニアの半数が採用する見込み
ニュースリリースでは、今後2〜5年以内に主流になると予測される注目すべきテクノロジーとして次の3つを取り上げている。
- AIコーディング・アシスタント:機械学習を活用したコーディング・ツール注2で開発の生産性と品質を向上させる。2027年までに企業エンジニアの50%が使用すると予測。
- AI拡張型ソフトウェア・エンジニアリング:開発ライフサイクルでの機能テスト、単体テスト、ドキュメント(文書)作成など定型的で繰り返し行われるタスク(作業)をAIで自動化するツール。
- プラットフォーム・エンジニアリング:ソフトウェアのデリバリー(ソフトウェアをより早く提供すること)とライフサイクル管理を目的とした、セルフサービス型の企業内開発者プラットフォームの構築と運用に関する取り組み。2026年までに大規模なソフトウェア・エンジニアリング組織の80%がこの手法を取り入れると予測。
ビジネス展開の重要指標となるハイプ・サイクル
ハイプ・サイクルでは、テクノロジーを次の5つのフェーズに分けている。
〈フェーズ1〉技術革新が起きる「黎明期」
〈フェーズ2〉成功事例が社会から注目を浴びる『「過度な期待」のピーク期』
〈フェーズ3〉失敗が増え関心が薄れるとともにテクノロジーの再編や改善が促される「幻滅期」
〈フェーズ4〉具体的な成功事例が増える「啓発期」
〈フェーズ5〉社会で主流採用が始まる「生産の安定期」
前述の3つのテクノロジーはいずれも、「過度な期待」のピーク期に向かって上昇しており、今後、幻滅期を経て定着することが見込まれる。
ハイプ・サイクルは通常、ガートナーと契約している企業のみに提供されるものだが、今回のようにプレスリリースとして概要も公表される。エネルギー関連産業においても参考となる、ブロックチェーンやセキュリティなどのハイプ・サイクルのレポートも多数あり、その内容はガートナーWebサイトから確認できる。
注1:米国ガートナー社によって造られた用語。革新的なテクノロジーに関してその成熟度や今後の動向を分析し図示したもので、DX(Digital Transformation)の推進をはじめ新たなビジネススキームの立案やマーケティング戦略の策定などの意思決定において、重要指標の1つとして参考にできる。ハイプ・サイクルは1995年から毎年発表されている。
[参考サイト]Gartner Hype Cycle
注2:コーディング・ツール:コーディング作業を効率化するツールのこと。コーディング(Coding)とは、HTMLやJavaScriptなどのプログラミング言語を使ってソースコードを作成する作業のこと。ソースコード(Source Code)とは、人間が理解・記述しやすいプログラミング言語などの言語やデータ形式を使用して、業務の処理内容を書いたコンピュータプログラム(テキストファイル)のこと。