ホーム・ネットワークとIPTV端末のイメージ
このほか、IPTVが最も広く利用される場として想定される、ホーム・ネットワークとIPTVとの関係性についても議論された。図2に、IPTV受信端末を包含するホーム・ネットワークのアーキテクチャを示す。
図2のIP-HN-Pは、すべてのIPトラフィックをサポートするホーム・ネットワーク領域を指し、もう一方のIP-HN-Sは、IPTV受信端末から他の機器(例:ビデオ・レコーダ)へ流れるIPTV関連のトラフィックをサポートするホーム・ネットワーク領域を指す。PR-HN-Sは、IPTV受信端末から他の機器へと流れるIPTV関連の非IPトラフィック(例:IEEE 1394 ※6)をサポートするホーム・ネットワーク領域のことである。
検討のポイントは、図2中央のIPTV TD〔IPTVターミナル・デバイス(受信端末)。STB(セット・トップ・ボックス)を想定〕の前後(図では左右)において、QoSやセキュリティなどの要件が大きく変化することである。例えば、アクセス網から受信端末までの区間は、アクセス網の延長として機能する部分である。一方、受信端末で受信した後は、信号は家庭内での利用のために、例えば各種ディスプレイや、ビデオ・レコーダなどにそれぞれ伝送される。
つまり、QoSの観点からは、前者(図2のIP-HN-P)においては、サービス提供側として品質確保に努める必要性は高いが、後者はユーザーが自己責任で管理する部分であり、それほど高い品質は求められないかもしれない。また、セキュリティの観点からは、前者はサービス提供側によるCAS/DRMにより管理される部分であるが、後者は、DTCP(※7)など別の技術で管理される。
そこで、これら受信端末の前後で信号の形態が変化することに着目した論理構造が提案され、作業文書に反映された(図3)。図3は、図2における2つのホーム・ネットワークエリア(IP-HN-PとIP-HN-S)は、物理的に重ね合わせられることを示している。この構造により、ホーム・ネットワーク上のIPTV対応端末は、IPTV関連のトラフィックのみを扱うことが論理的に明示された。IPTVに対応しない機器は、IP-HN-Pに接続される。
ホーム・ネットワークは、ITU内でも注目が高まっており、FG IPTVでの作業を契機に、各関連SGでも議論が活発化していくと予想される。
次回のFG IPTV会合は、5月7〜11日まで、スロベニアのブレッド市で開催される予定。
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用語解説
※6 IEEE 1394
コンピュータとAV関連機器などを接続する高速シリアルバス規格。アップル社が開発・提唱したもので、一般にFireWireと呼ばれる(ソニーは自社製品にi.Linkという名称を使用)。現在、伝送速度が100、200、400Mbpsに対応するFireWire 400(6ピン)と、800Mbpsに対応したFireWire 800(9ピン)が規格化されている。
※7 DTCP: Digital Transmission Content Protection
デジタル伝送コンテンツ保護。IEEE 1394による伝送における暗号化技術。日立製作所、インテル、松下電器産業、ソニー、東芝の5社共同開発。