宮城県は2017年3月22日、同県亘理町(わたりちょう)に建設中だった大規模太陽光発電所「亘理・山元第2地区太陽光発電所」が完成し、運転を開始したことを明らかにした。設計、調達、施工(EPC:Engineering、Procurement、Construction)は三菱電機が担当している。完成後の発電、売電事業は宮城県が担当する。
図 「亘理・山元第2地区太陽光発電所」の全景
出所 三菱電機
発電所の所在地は宮城県亘理郡亘理町吉田。太平洋沿岸の土地で、かつては住宅地だったが東日本大震災に伴う津波で甚大な被害を受けた場所だ。その後、ここに住宅を持っていた世帯は集団で移転し、跡地となったこの場所は亘理町の町有地となった。今回の事業では、宮城県が亘理町からこの土地を無償で借り受けて、発電所を建設し、売電事業を展開する。
施工時には2点工夫した。亘理町がこの発電所の建設地を雨水を一時的に貯める調整池としても活用することになっているので、パワーコンディショナーなどの配置を工夫した。調整池の水は北から南に流れ、南の端で海の方向に流すようになっている。そこで、パワーコンディショナーなどは雨水の流出口から離れた場所に設置した。
もう1つは塩害対策だ。津波をかぶって土壌に塩分が染み込んでいるだけでなく、太平洋がすぐそばにあるので、一般的な架台を使用したら塩害ですぐにボロボロになっててしまう。そこで三菱電機はメッキ処理を施して塩害の影響を受けない架台を製作し、この発電所に設置した。また、積雪対策として、太陽光発電モジュールの背面に補強の棒を取り付けたものを用意した。これで、モジュール上に垂直方向に1.5m雪が積もっても耐えられるという。
発電所の敷地面積は4655万m2(4655ha)。ここに三菱電機製の単結晶シリコン型太陽光発電モジュールを8344枚並べた。モジュール1枚当たりの出力は270Wだ。パワーコンディショナーは高圧受変電設備と一体化したものを設置した。パワーコンディショナーは東芝三菱電機産業システムの製品を、高圧受変電設備はWave Energy(旧社名はヒロセ―)の製品を採用した。
発電所全体の最大出力は約2.3MW(2253kW)で、宮城県は年間発電量をおよそ1897GWh(189万7000kWh)と見込んでいる。資源エネルギー庁が試算した一般世帯の年間電力消費量は、3600kWh。この値を当てはめると、約527世帯分に当たる。発電した電力は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を利用して全量を東北電力に売電する。売電単価は1kWh当たり32円(税別)。売電収入は宮城県内の農業水利施設の維持管理費に充て、宮城県内の農業、農村の復興を支援する。