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鹿児島の離島を再エネで動く「みらいの島」に、日産が電気自動車を40台導入

2017/04/13
(木)
SmartGridニューズレター編集部

日産自動車は、鹿児島県薩摩川内市の離島「上甑島(かみこしきしま)」に電気自動車を40台導入したと発表した。

日産自動車は2017年4月12日、鹿児島県薩摩川内市(さつませんだいし)の離島「上甑島(かみこしきしま)」に電気自動車(EV)「e-NV200」を40台導入したと発表した。上甑島では2015年11月から住友商事と薩摩川内市が共同で出力約100kWの太陽光発電システムと、電気自動車の使い古しのリチウムイオン蓄電池を活用した大型蓄電池を導入し、運営を続けている。

図 日産自動車が上甑島に40台導入したEV「e-NV200」

図 日産自動車が上甑島に40台導入したEV「e-NV200」

出所 日産自動車

薩摩川内市は2013年3月に「次世代エネルギービジョン及び行動計画」を策定し、再生可能エネルギーなどの「次世代エネルギー」を積極的に導入した街づくりに取り組んでいる。しかし、上甑島のような離島では、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを積極的に導入するには障害がある。

離島で電力を届けている送電線の系統は、離島のごく小さな範囲だけで独立している。小さな範囲で稼働している系統に、太陽光発電や風力発電といった気候などの要素で出力が大きく変動する電源の電力を流すと、ちょっとした出力変動で系統の電力が不安定になり、電気機器が故障したり、停電などの事態を招いてしまうのだ。そこで薩摩川内市は住友商事と共同で、太陽光発電システムに合わせて、大型蓄電池も導入した。

図 住友商事と薩摩川内市が共同で建設した太陽光発電システム。奥に見える物流コンテナにはEVの使い古しのリチウムイオン蓄電池が入っており、太陽光発電システムの出力変動を吸収する役目を担っている

図 住友商事と薩摩川内市が共同で建設した太陽光発電システム。奥に見える物流コンテナにはEVの使い古しのリチウムイオン蓄電池が入っており、太陽光発電システムの出力変動を吸収する役目を担っている

出所 日産自動車

現在のところ、上甑島の主たる電力供給源は「甑島第一発電所」。出力は14.25MW(1万4250kW)。重油を燃料としてディーゼルエンジンを動かして発電している。ほかには、先に紹介した蓄電池併設の太陽光発電システムと、九州電力が設置した出力250kWの風力発電設備があるくらいだ。再生可能エネルギーの導入を進めたいが、離島の電力系統の規模を考えると時間をかけて環境を整備しながら進めなければならないのだ。

今回、日産自動車が導入したEVの台数は40台。日産自動車によると、上甑島を走る乗用車の数はおよそ400台。今回のEV導入で、上甑島を走る乗用車の10台のうち1台がEVということになる。他の地域では考えられないほど高いEV導入率だ。EVには航続距離が短いという問題が付きまとうが、決して広くはない離島で島民の「足」として使うなら航続距離は問題にはならない。島の自然環境を保護するという観点から見ても、EVは離島に向く乗用車と言える。

そして、再生可能エネルギーのさらなる導入を目指す上甑島では、EVが重要な役割を果たす可能性がある。駐車中のEVが再生可能エネルギーの出力変動を吸収する役目を果たせるかもしれないからだ。今回のEV導入では、その可能性を検証する。数年後には、島内のEVの充電を制御するシステムを構築する予定もあるという。移動の足としても使える「走る蓄電池」と、EVの使い古しの充電池を組み合わせて、再生可能エネルギーの出力変動に対応できる体制を作ろうということだ。

図 コンテナを開けると、EVで使い古したリチウムイオン蓄電池が並んでいる

図 コンテナを開けると、EVで使い古したリチウムイオン蓄電池が並んでいる

出所 日産自動車

また、今回投入したEVが搭載する蓄電池が寿命を迎えたら、定置型蓄電池として再利用するとしている。EVの台数が増えれば「動く蓄電池」が増え、そのEVが活躍して搭載する蓄電池が寿命を迎えたら、定置型蓄電池の蓄電容量が大きくなる。上甑島の実験に参加している住友商事、日産自動車、薩摩川内市は、EVを活用すればするほど再生可能エネルギーの出力変動を吸収する能力が上がっていき、さらなる再生可能エネルギー発電設備の導入につながるという将来像を描いている。住友商事、日産自動車、薩摩川内市はこの事業を通して地域に再生可能エネルギーとEVを普及、定着させる事業モデルの構築を目指すとしている。


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