国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2017年4月20日、「圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES:Compressed Air Energy Storage)システム」の実証実験を開始したと発表した。実験施設は静岡県賀茂郡河津町に設置し、近隣にある東京電力ホールディングスの「東伊豆風力発電所」(静岡県賀茂郡東伊豆町)から電力の供給を受ける。
図 静岡県賀茂郡河津町に設置した「圧縮空気エネルギー貯蔵システム」の実証施設
出所 一般財団法人エネルギー総合工学研究所
このシステムの仕組みは、それほど難しいものではない。風力発電などで発電した電力で圧縮機を動かして空気を圧縮し、その圧縮空気をタンクに貯蔵しておく。電力が必要になったらタンクから圧縮空気を放出し、発電機を回転させて発電する。つまり、圧縮空気を詰め込んだタンクが蓄電池の役割を果たすというわけだ。今回のシステムでは空気圧縮時に発生する熱も貯蔵しておき、放電時に空気を加熱するために利用する。今回設置した圧縮空気エネルギー貯蔵システムの能力は、電力で換算すると出力が1MW(1000kW)で、蓄電容量は500kWhに当たるという。
図 「圧縮空気エネルギー貯蔵システム」の仕組み
出所 一般財団法人エネルギー総合工学研究所
今回の実証実験では、東伊豆風力発電所の発電量を予測し、そのデータに基づいて圧縮空気エネルギー貯蔵システムを制御して東伊豆風力発電所の出力変動を緩和し、発電を制御することを目指す。予測情報に基づいて圧縮空気エネルギー貯蔵システムの運転を制御するシステムは早稲田大学が開発し、圧縮空気エネルギー貯蔵システムの設備構築は一般財団法人エネルギー総合工学研究所が担当した。神戸製鋼所は一般財団法人エネルギー総合工学研究所から外注を受けて、機器の設計や製造を請け負った。
実験開始日の20日から、圧縮空気エネルギー貯蔵システムに、制御するシステムを実装し、東伊豆風力発電所と接続する。風力発電機の出力変動に対応して、圧縮空気エネルギー貯蔵システムから圧縮空気を放出したり、圧縮機を作動させて圧縮空気をタンクに詰めるなど運転状態を制御することで、風力発電所からの出力がなるべく一定になるように制御する。
図 「圧縮空気エネルギー貯蔵システム」を制御して、風力発電所の出力をなるべく一定に保つ
出所 一般財団法人エネルギー総合工学研究所
また、2016年4月に施行となった「計画値同時同量制度」への対応も目指す。この制度は発電事業者に対して、前日と、1時間前にそれぞれ30分単位の発電計画を提出することを求めるものだ。太陽光発電や風力発電の場合は、発電事業者に代わって一般送配電事業者や小売電気事業者が計画を作成することもある。今回の実証実験では、計画値同時同量制度で提出が必要になる発電計画値と、実際の発電値が乖離しているときに圧縮空気エネルギー貯蔵システムを制御して、計画と実績の差を最小化することを目指す。
今回の実証実験に参加している一般財団法人エネルギー総合工学研究所などは、天候によって出力が大きく変動する風力発電の電力を安定して利用することを目指して、システムの制御技術を確立するとしている。