国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、一般社団法人太陽光発電協会、奥地建産は2017年4月26日、太陽光発電モジュールを地上に設置する際に使用する架台の性能と信頼性を検証する実証試験を開始したと発表した。再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まり、日本全国で太陽光発電設備の設置が続いたが、構造設計が不十分あるいは誤っているものが強風で破損するという事故も起きている。今回の試験で架台の信頼性と性能を検証し、その結果を基に太陽光発電モジュールと架台をなるべく安価に、そして安全に設置するためのガイドラインを策定することを目指す。
試験設備としては、世界最大規模の「水平型動風圧試験装置」を用意した。この装置は「圧力チャンバー」という箱と風圧をかける加圧ファン、圧力測定機などで構成するもの。圧力チャンバーに入れた物体に、加圧ファンで風圧をかけることで、物体の耐風圧性能を調べることができる。今回用意した装置では、圧力チャンバー内の空間が16×6×4mとかなり大きく、太陽光発電モジュールと架台を実際に地上に設置しているのと同じ状況で試験ができる。
図 今回の実証試験のために用意した水平型動風圧試験装置。左が太陽光発電モジュールと架台を設置したところで、右が加圧ファン
出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
今回の実証試験では台風による強風まで想定しており、試験装置は最大加圧能力が±1万5000Paと、太陽光発電モジュールや架台を破壊できるほどの性能のものを用意した。実証試験は2018年度一杯まで実施し、その結果と試験で得た知見を活かして、2019年2月末までに太陽光発電システムの架台、基礎の設計基準となる設計ガイドラインの策定を目指す。
固定価格買取制度による太陽光発電による電力の買取価格が下落する一方である現状を踏まえて、このガイドラインでは「長期にわたって社会の財産となる安全性の高い太陽光発電システムを提供」することだけでなく、設置する太陽光発電システムの「経済性」も高くなるということも考慮したものになるとしている。つまり、太陽光発電システムを安全に、かつなるべく安価に設置するためのガイドラインを目指すということになる。
太陽光発電システムの設置と売電が事業として成り立たなくなると、太陽光発電の需要が急減し、現在参入しているメーカーも撤退していくだろう。一方で、安価で大電力を発電できる太陽電池の研究は続いている。研究の成果が市場に出れば発電コストが劇的に下がり、買取価格が低下しても事業として採算が取れる可能性が残る。しかしモジュールを支える架台には、大きな技術進化は見込めない。今回の実証試験には、太陽光発電が今後も長い間事業として成立し続けるための土台づくりを期待したい。