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NTT西日本、LoRaWANネットワークで「下り」から通信を始める「クラスB」の実証実験に成功

2017/05/25
(木)
SmartGridニューズレター編集部

NTT西日本は、LoRaWANの「クラスB」通信について、試験環境を構築して実証実験を実施したと発表した。

西日本電信電話(NTT西日本)は5月23日、LoRaWANの通信のうち端末への下り通信から通信を始める「クラスB」について、試験環境を構築して実証実験を実施したと発表した。日本では初の試みだという。実験ではクラスB通信に問題なく成功し、各種サービスにも応用可能という結果を得たという。

日本国内で普及しつつあるLoRaWANの通信方式は、端末側からサーバーやクラウドに向けた「上り」から通信を開始する「クラスA」と呼ぶものだ。上り通信に対する応答という形で下り通信も可能だが、下り通信を通信のきっかけにする「クラスB」は日本では実現できていなかった。

NTT西日本はさまざまな企業にLoRaWANのネットワーク環境を提供し、それぞれの企業が有効な活用法を発見することを支援する「LPWAネットワークを活用したフィールドトライアル」に取り組んでいる。そこで、多くの企業からサーバー側から端末への通信に対応できないかという要望を受けていたという。例えばガス会社が災害発生時に、災害拡大を防ぐために各世帯にあるガスメーターを遠隔で閉めるという使い方が考えられるが、これを実現するにはサーバー側から、つまり下りから通信を始める必要がある。

LoRaWANで下りから通信を始める仕様は「クラスB」としてLoRa Allianceが規格を策定しているが、欧米で使うことを想定したものになっており、日本の法規制を考えるとそのまま流用することはできなかった。日本の法律は例えば、長時間無線通信を続けて電波を独占することがないように、送信時間制限を設けている。また、通信開始時はほかに送信者がいないことを確認する「キャリアセンス」を実行するように求めている。

そこでNTT西日本はLoRaWAN端末、ゲートウェイ、そして通信管理や端末認証などの機能を提供する「ネットワークサーバー」に向けて、日本の法規制に合わせてクラスB通信を実現するファームウェアのドラフト版を開発し、それぞれの機器に導入した。

そこで、大阪ガスが提供するテスト用ガスメーター数十台をLoRaWANで結ぶネットワークを構築し、実際にクラスBの通信がどれほど有効であるかを調べた。具体的にはテスト用ガスメーターをクラスB通信で遠隔操作し、検針データを取得した。最初は1対1通信で通信性能を評価し、複数台の環境で通信成功率、遅延、電波状態などを評価した。その結果、日本の法規制に合わせたクラスB通信は十分実用のサービスでの使用に耐えるものと評価したという。

図 クラスBの通信でガスメーターを遠隔制御し、検針データを取得した

図 クラスBの通信でガスメーターを遠隔制御し、検針データを取得した

出所 西日本電信電話

今回の実験成功を受けてNTT西日本は、まずLoRa Allianceの動きを待つ姿勢を示した。LoRa Allianceが日本向けクラスBの仕様を策定すれば、対応製品の市販が始まる。ここまで来たら、LoRaWANの活用を考える企業にクラスBという機能もあることを提案し、従来は実現できなかった機能を実現していくことを考えているという。


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西日本電信電話

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