東芝は2017年6月20日、東急建設から自立型水素エネルギーシステム「H2One」の注文を受けたと発表した。東急建設技術研究所のオフィス棟に1台納入し、今年中に運転を開始する予定だ。東芝によると、オフィスビルにH2Oneを納入するのはこれが初めての例になるという。
図 東芝の自立型水素エネルギーシステム「H2One」
出所 東芝
H2Oneは受注時に顧客の要望を聞き取って、希望に合わせた構成で提供している。今回東急建設に納入するH2Oneは、100Nm3の水素を貯蔵できるタンクと、最大出力3.5kWの水素燃料電池を備えたものになる。水素燃料電池は発電時に発生する熱を利用する機能も備えるが、今回納入するものは毎分0.81リットルの温水を供給でき、タンクいっぱいに貯蔵した100Nm3の水素を使い切るまでにおよそ2300リットルの温水を作れるという。電源となる太陽光発電設備や、発電した電力を一時的に蓄積していく蓄電池は東急建設の技術研究所にすでに備わっているので、それを利用する。
東急建設は2016年8月から、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」のモデルとして、技術研究所のオフィス棟の改修を進めている。オフィス棟は築25年の地下1階、地上5階の建物。建物を業務に使用しながら改修工事を進めており、2017年度中に工事が完了する予定となっている。
2016年度は、外壁の裏側に断熱材を入れる外断熱工事や、窓ガラスを断熱性能が高い「Low-eガラス」を複層にしたものに入れ替える工事など、建物の断熱、遮熱性能を高める工事を完了させている。加えて館内照明を消費電力が少ないLED照明に入れ替え、壁面に太陽光発電設備を設置する工事も実施している。
図 2016年度分の改修工事が完了した後のオフィス棟
出所 東急建設
2017年度は、地中熱利用熱源、太陽熱集熱システムの導入や、効率が高い空調熱源、空調機器への設備入れ替えなどに合わせて、今回東芝が納入する自立型水素エネルギーシステムを導入する。すでに設置した太陽光発電設備を電源として水素を製造し、必要に応じて水素燃料電池で発電し、その電力を利用する。発電時に発生する熱で沸かした温水は、太陽熱集熱システムで過熱した温水と合わせて蓄熱槽に蓄えて、夏季は空調用除湿剤に再生熱として、冬季は暖房用熱源として利用する。さらに、災害発生時は地域にH2Oneで生成した水素を供給することも検討しているという。
東急建設は、改修後のオフィス棟を多様なエネルギー源を有効活用する技術の検証や、建物のエネルギー性能を実証する場として活用するとしている。