パナソニックとパナソニック システムソリューションズ ジャパンは2016年7月4日、画像処理技術を活用した社会基盤(インフラ)点検サービス「Smart Image Sensing」の提供を始めると発表した。特徴は2点。1つ目は、高精細な4K画像を利用して、従来は検知できなかった構造物のゆがみまで検知できるという点。もう1つは、必要に応じてカメラ搭載ドローンを活用することで、災害発生現場など人間が入れない場所も撮影し、状況把握を可能にするという点。
提供するサービスメニューは「水中Rov.点検サービス」「インフラ設備撮影サービス」「4K画像活用構造物点検サービス」「ドローン点検支援サービス」の4種類。水中Rov.点検サービスはすでに2016年11月から提供を始めている。ほかの3種類のサービスは2017年度内に順次提供を開始する。
どのサービスでも、撮影した画像はパナソニックが運営するクラウドに蓄積し、独自アルゴリズムによる自動解析や、専門家の目視による分析を実施する。パナソニック システムソリューションズ ジャパンは、防犯カメラや監視カメラに向けた映像管理ソフトを開発、販売している実績があり、侵入者自動検知や、物体の自動検知などの機能を提供している。そのノウハウと知見を活かして今回のサービスを提供する。また、映像データを自社で分析するという企業に向けては分析前のデータ提供にも応じる。
図 パナソニックが提供を始める画像解析サービスの概要
出所 パナソニック
「水中Rov.点検サービス」は、水中を遠隔操作で動き回るロボット(ROV:Remotely Operated Vehicle)を利用して、ダム構造物のうち水中に沈んでいる部分を広くくまなく撮影し、その画像から劣化などがないか点検するサービス。定期的に撮影し、過去の画像も合わせて分析することで、経年変化の有無も確認できる。ダム水中部をくまなく点検することは困難な作業だったが、ROVを利用することで、作業効率が大きく向上し、点検作業からデータ分析結果の提出と報告までの時間を大きく縮めることができる。
「インフラ設備撮影サービス」は電柱など、広い範囲に配置してある構造物の高所を点検するサービス。自動車などで移動しながら、各構造物を自動的に撮影し、過去の撮影データや独自アルゴリズムで異常を検知する。今後は解析技術を進化させて、異常の予兆を検出する機能も加えるとしている。例えば、電線近くに繁茂している樹木の生育状態を分析し、電線に届いて障害を起こす予兆を検知するという。
「4K画像活用構造物点検サービス」は橋梁やトンネル、鉄塔などの経年変化、劣化を検出するサービス。従来このような高所にある建築物の状態を点検するには、経験を積んだ専門家の目視に頼るか、センサーを設置してその値の変化から検出するという方法があった。
人間の目視による点検は、コンピュータでも検出できない異変を検出できる可能性があるが、人間のやることである以上、点検漏れや見逃しなどが発生する可能性は排除できない。また、センサーで異常を検知するには、対象物に加速度センサーやひずみセンサーを取り付けなければならない。高所に取り付けることになるので、足場を作って、時間をかけて作業員の安全を確保しながらセンサーを設置していかなければならないが、そうするとセンサーの設置に大きなコストがかかる。
4K画像活用構造物点検サービスは、以上の問題を4Kの超高精細画像を活用することで解決する。4Kカメラで橋梁などの検査対象を定期的に撮影して画像を分析することで、たわみなどの変化を検出できるという。4K画像(3840×2160ピクセル)は、フルHD画像(1920×1080ピクセル)よりもはるかに情報量が多いため、構造物のわずかな変化まで捉えることができる。その特性を利用したサービスだ。
「ドローン点検支援サービス」は、建造物や災害発生現場をドローンから見下ろすように撮影し、その画像を解析するサービス。建造物の屋上近くなどの異常を検知するほか、災害発生現場を撮影することで、リアルタイムで現場の状況を把握できる。さらに画像を解析することで、二次災害が発生しそうな部分など、要注意箇所を検出し、その部分の監視を続ける。ドローンを飛ばすには飛行申請提出など、事前の手続きが必要だが、このサービスを利用すればすべての作業をパナソニックが代行する。依頼者は結果報告を待つだけでよい。
パナソニックは今後、さまざまな業種に合わせた「業務別サービスパッケージ」の提供を予定している。さらに、撮像画像を機械学習などで分析し「異常検知」「予兆監視」などの機能を加えていく方針も示している。
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