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水田由来のJCMクレジットの普及を目指す新組織、大阪ガスら8社が設立

「水田JCMコンソーシアム」設立
2025/10/24
(金)

水田由来のJCMクレジット普及へ「水田JCMコンソーシアム」設立

 大阪ガス株式会社(以下、大阪ガス)、出光興産株式会社(以下、出光)、兼松株式会社(以下、兼松)、Green Carbon株式会社(以下、Green Carbon)、損害保険ジャパン株式会社(以下、損害保険ジャパン)、東邦ガス株式会社(以下、東邦ガス)、芙蓉総合リース株式会社(以下、芙蓉総合リース)、三菱UFJ信託銀行株式会社(以下、三菱UFJ信託銀行)の8社は、二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)注1にもとづく水田由来のクレジットの普及拡大を進める組織として「水田JCMコンソーシアム」を設立した。民間企業が組成するものでは日本初だという。対象とするのは、水稲の栽培期間中に一定期間、水田の水を抜き、土壌を乾燥させた後、再び水を張ることを繰り返す手法「AWD(Alternate Wetting and Drying)」によるJCMクレジット。2025年10月23日に発表した。

AWDによるJCMクレジットの価値をパートナー国に発信

 一般に水を張った水田はメタンが発生しやすいことから、水を抜く期間を設けることで、常時水を張った状態と比較してメタンの排出を減少させることができる。土壌の質によっては、メタンの排出を約30%削減するとともに、米の収量を向上させるという研究結果もある。一方で、AWDは天候の影響を受けやすいが、その分析が十分にされていないという課題があるという。

 水田JCMコンソーシアムは、大阪ガスが構想し、同社を含めた8社に加え、オブザーバーとして環境省と農林水産省が参画する。大阪ガスは、フィリピンのバタンガス州、ラグーナ州、北イロコス州の3州でAWDを活用したメタン排出削減のプロジェクトに参画している。

 AWDがJCMクレジットの対象として両国間で正式に承認されているフィリピンで、各社が推進する間断かんがい技術を活用したプロジェクトによって米の収量がどの程度増加するかを分析し、パートナー国の政府関係者や農家に発信することで、プロジェクトの複合的な価値を発信する。これにより、JCMにもとづく水田由来のクレジットの関心を高め、普及拡大につなげる。さらに、雨量や台風とAWDの関係の分析を通じ、これまで不透明であった天候リスクを可視化してプロジェクトに対する予見性を高め、投資の促進につなげるという。

 今後、会員企業の拡大を検討する。

 大阪ガスによると、現在、農業分野でJCMクレジットの発行実績はなく、発行に向けた取り組みが進められている。その中で、フィリピンは、JCMのパートナー国の中で、農業分野におけるJCMクレジット発行に向けた取り組みが最も進展している国の1つである。


注1:JCM(二国国間クレジット制度:Joint Crediting Mechanism):途上国等と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減成果を両国で分け合う(シェアする)制度。

参考サイト

大阪ガス株式会社 プレスリリース 2025年10月23日、「間断かんがい技術(AWD)を活用したJCMクレジットの普及拡大を目指すコンソーシアムの組成について

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