東芝と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年6月18日、モジュール面積703cm2で、エネルギー変換効率が11.7%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールを開発したと発表した。モジュール面積703cm2は、世界最大になるという。
図 東芝とNEDOが今回開発した、世界最大の面積を誇るペロブスカイト太陽電池モジュール
出所 東芝
ペロブスカイト太陽電池は、光吸収層に「ペロブスカイト」と呼ぶ結晶構造を形成する材料を使用した次世代の太陽電池だ。フィルムに材料を塗布すれば作成できるため、現在広く普及しているシリコン結晶を使用した太陽電池に比べて安価になると期待を集めている。また軽く、比較的自由に曲げられるため、従来の太陽電池モジュールでは重くて設置できない場所や、ビルの壁など、これまで設置できなかったさまざまなところに設置できる。
しかし、現状ではシリコン結晶を使用した太陽電池と比較すると大きなモジュールを作れない。また、ごく小さな試作セル(0.09cm2)では、22.7%と、シリコン結晶の太陽電池に劣らない変換効率を記録しているが、面積が広いセルやモジュールでは、材料を塗布する際に均一な膜を成形することが難しく、変換効率が大きく下がってしまうという課題がある。
今回は東芝が開発した「メニスカス塗布技術」と、材料を2回に分けて塗布する手法を利用してモジュールを試作した。「メニスカス」とは、液体の表面が凹型や凸型の曲面を作る現象。「アプリケータ」と呼ぶ棒と基盤のすき間に材料の液体を注入すると、液体表面にメニスカスができる。これで材料を載せた基盤を移動させれば、材料の上に膜を形成できる。
図 メニスカス塗布技術でフィルム状に膜を作る様子のイメージ
出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
材料を2回に分けて塗布する手法では、1回目にヨウ化鉛(PbI2)を塗布し、2回目にヨウ化メチルアンモニウム(CH3NH3I)を塗布して2種類の材料を反応させて膜を作った。また、塗布する材料の組成を工夫して、材料の反応を制御し、均質な結晶で均一な膜を形成した。
今後は大面積のフィルムの材料を均一に塗布する技術や材料を印刷する技術を開発して、実用的な大きさのモジュールを製造することを目指す。ちなみに、東芝とNEDOは900cm2を実用化の1つの目安と考えている。また、ペロブスカイト層の材料改良などの研究に取り組み、結晶シリコン並みの変換効率達成も目指すとしている。2030年には発電コストが1kWh当たり7円となることを目標として掲げている。