2015年8月19日、独立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下:NEDO、神奈川県川崎市、理事長:古川一夫)は、中国・国家発展改革委員会と馬鈴薯でんぷんの残渣からバイオエタノールを製造する技術を導入し、実証する日中共同事業を実施することで合意、2015年8月10日に基本協定書(MOU)を締結したことを発表した。
同事業では、中国の黒龍江省において、日本の優れた糖化技術と無水化技術を用いて、馬鈴薯でんぷん工場から排出される馬鈴薯でんぷん残渣を原料としたバイオエタノール製造技術を2017年度末までに実証し、当該技術の普及促進を目指す(図参照)。
中国は自動車保有台数が飛躍的に増加しており、そのガソリン消費量も著しく増大する見通しである。中国政府はガソリン消費量を抑えるため、2020年までにバイオエタノールを10%混合したガソリン(E10)を全土に普及させることを目標にしており、その目標を達成するためには、十分な量の燃料用エタノールを製造する必要がある。一方、中国政府は食料価格の高騰を避けるため、トウモロコシなどの食料からのエタノール生産プラントの新設を認めていない。
このような背景から、NEDOは、中国の国家発展改革委員会※1と馬鈴薯※2でんぷんの残渣※3からバイオエタノールを製造する技術を導入し実証する日中共同事業を実施することで合意した。同事業の成果を、馬鈴薯でんぷん残渣からのバイオエタノール製造技術のショーケースとし、中国の東北地方を始めとした馬鈴薯産地での普及を目指す。
図 バイオエタノール製造プロセス
※1 国家発展改革委員会:中国マクロ経済政策を担う行政部門
※2 馬鈴薯(ばれいしょ):ジャガイモ
※3 残渣(ざんさ):搾りかす
※4 北大荒馬鈴薯集団有限公司:中国最大の馬鈴薯でんぷん生産企業
※5 糖化技術:デンプンやセルロースなどの多糖類を分解、アルコール発酵可能な単糖類にする技術。
一般にバイオマスのエタノール化は、酵素による糖化を経て酵母によるエタノール発酵を行うが、馬鈴薯でんぷん残渣はでんぷん質とセルロースが複雑に絡み合った構造をもち、一般の酵素では糖化できない課題があった。これに対し今回実証に用いるアクレモニウム糸状菌は、分泌する複合酵素によって馬鈴薯でんぷん残渣を分解(糖化)するので、エタノール製造が可能である。
※6 無水化技術:エタノール中の水分を除去する技術
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