[ニュース]

太陽光発電の自家消費をAIで最適化、日立GLSら

PV自家消費20%向上目標に実証
2025/10/29
(水)

家庭のPV自家消費をAIで最適化する実証実験

 日立グローバルライフソリューションズ株式会社(以下、日立GLS)と株式会社日立製作所(以下、日立)は、家庭における太陽光発電(PV)の自家消費をAI技術で最適化する実証実験(以下、本実証)を2025年11月上旬に茨城県内で開始する。家庭の電気代削減の効果に加え、電力系統の安定化やエコキュート注1を活用したエネルギー調整によるCO₂排出削減につなげるのが狙い。2025年10月28日に発表した。

AIがエコキュートの運転計画を最適化

 日立GLSと日立の実証では、実証参加者の自宅に設置されたエコキュートの電力センサーから、運転状況や消費電力、給湯需要などのデータを収集すると同時に、家庭における太陽光発電量などのデータを計測する。家庭におけるエコキュートの稼働状況、給湯需要、消費電力、太陽光発電量などのエネルギー利用に関する知見をもとに、収集したデータをAI技術が分析し、運転計画を立案して最適化を図る。この仕組みについて、有効性を検証する。

 また、従来の深夜沸き上げ運転と昼夜分割運転の経済性のシミュレーションによる比較や、太陽光発電による自家消費の経済的メリットについても評価する。日立GLSは、この取り組みにより太陽光発電による電力の家庭内活用を約20%向上させることを目標としている。

 実施期間は、2025年11月上旬から2026年1月末までの予定で、参加対象は日立家電メンバーズクラブ会員で、日立ブランドのエコキュートを設置している家庭。

 同実証は、日立GLSが成長戦略の柱として推進する「プロダクトのデジタライズドアセット化注2」の取り組みの1つでもある。

 日立GLSと日立は、実証成果を踏まえ、将来的には家庭で余った電力を地域内で共有するなど、HEMS注3を活用した再生可能エネルギーの融通を可能にする仕組みの構築を目指す。これにより、各家庭や中小企業といった地域内のさまざまなステークホルダーと連携し、太陽光発電を最大利用する地産地消モデルの仕組みづくりに取り組む計画だ。

 また、日立は、日立市と「次世代未来都市の実現に向けた共創プロジェクト注4」を推進しており、その中で「グリーン産業都市の構築」をテーマに掲げている。これまで取り組んできた中小企業の脱炭素化支援に加え、一般家庭も含めた地域全体の再生可能エネルギー有効活用が不可欠であるとし、今回の日立GLSの実証成果を地域モデルに反映させる。これにより、地域全体で持続可能なエネルギーエコシステムの構築を図り、「グリーン産業都市」構想の具体化を加速させる方針である。

 日立GLSは、実証で得られたデータやナレッジを統合し、家庭内のエネルギー管理や地域との連携による調整力の創出などを通じ、将来的には事業化を目指すとしている。

 日立によると、近年、電気料金の高騰や再生可能エネルギーの普及を背景に、家庭での太陽光発電の自家消費ニーズが高まっている。その中で、固定価格買い取り制度(FIT)の適用が終了した「卒FIT」家庭で、余剰電力の有効活用が課題になっている。エコキュートによる熱エネルギーの蓄積は、この課題に対する有力な解決策の一つと見なされている。


注1:エコキュート:「エコキュート」は、電力会社・販売メーカーが推奨する自然冷媒ヒートポンプ給湯機の愛称。 関西電力株式会社の登録商標。
注2:プロダクトのデジタライズドアセット化:物理的な製品や設備がデジタルデータとして管理・活用される状態。
注3:HEMS(Home Energy Management System):家庭内の電力使用状況を「見える化」し、効率的なエネルギー管理を可能にするシステム。
注4:次世代未来都市の実現に向けた共創プロジェクト:日立市と日立製作所が2023年12月21日に締結した、デジタルを活用したスマートシティ実現に向けた包括連携協定。

参考サイト

日立グローバルライフソリューションズ株式会社、株式会社日立製作所 ニュースリリース 2025年10月28日、「地域全体での脱炭素化に向け、家庭向け太陽光発電の自家消費を最適化する実証実験を開始」
 

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