国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は2016年10月14日、同研究所の研究チームが石炭から直接メタンを生成する菌を発見したと発表した。石炭層内のすき間に存在するメタン(コールベッドメタン)を新たな燃料資源として開発する動きがあるが、今回の発表でその動きは勢いを増しそうだ。
メタンを生成する菌はすでに150種類以上が見付かっているが、石炭から直接メタンを生成する菌の発見は世界初。これまでは、石炭からメタンを生成するにはまずほかの菌が石炭を分解して水素や酢酸、メタノールなどの物質を生成し、それらの物質を菌が分解することでメタンを得られると考えられていた。
今回研究チームが発見した菌は、石炭を構成する「メトキシ芳香族化合物」から直接メタンを生成する。11種の菌で実験したところ、そのうちの2種類がメタンを生成することが分かった。
さらに、見つかった菌のうちの1つを、各種石炭(褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭)の上で培養してみたところ、石炭からメタンを取り出すことに成功した。特に、石炭化度が低く、メトキシ芳香族化合物を比較的多く含む褐炭で多くのメタンを生成できた。この実験の結果から、コールベッドメタンの形成に微生物が関係している可能性があるとしている。また、地球上に最も多量に存在する有機物であるケロジェンもメトキシ芳香族化合物を含んでいることから、今回見つかった菌が、石炭層に限らず地下の天然ガス資源の形成に関係している可能性があるという。
図 各種石炭から検出されたメトキシ芳香族化合物とメタン生成菌
出所 国立研究開発法人 産業技術総合研究所
今後はメトキシ芳香族化合物からメタンを生成する過程を詳細に調べる予定。さらに、地下においてどのように今回発生した菌が分布しているかを調べ、天然ガス資源の形成における可能性を評価する予定。