NTTドコモは2016年11月15日、LPWA(Low Power Wide Area)の通信と「低カテゴリLTE通信」を仲介するゲートウェイ機器の実証実験を始めた。センサーなどIoTの末端にある多数の機器とLPWAで通信し、収集したデータを集約して「低カテゴリLTE通信」でインターネットを経由してクラウドに送信するゲートウェイ機器を開発し、さまざまな場面を想定した実験を進める。
LPWAの中でも、920MHz帯や2.4GHz帯といった免許不要の周波数帯を使用するものには、通信免許が要らないので機器の開発コストと開発期間を圧縮できるという大きなメリットがある。しかし、基地局などの通信環境の整備はまだ進んでいない。京セラコミュニケーションシステムが2017年2月から、免許不要のLPWAの一種であるSIGFOXの通信サービスを始めるが、東京23区を中心にした狭いエリアからのサービス開始となる。
LPWAには、携帯電話が利用するLTE(Long Term Evolution)を基にしたものもある。これが「低カテゴリLTE」だ。IoTの通信で利用することを想定して通信速度を落としたり、通信に使う帯域の幅を狭めることで、通信モジュールのコストを下げ、消費電力量を抑えたものである。LTEの周波数帯で通信するので免許が必要だが、携帯電話通信事業者の基地局を流用できるので全国規模の通信が可能という大きな利点がある。
今回、NTTドコモが開発したゲートウェイは、無免許LPWAの利点と、全国規模の通信が可能な低カテゴリLTEの利点の両方を備えるものと言える。無免許LPWAで狭い範囲の無線ネットワーク(自営網)を作り、自営網に所属する多数のセンサー機器からデータを集め、低カテゴリLTEで遠隔地に送信することができる。今回の実験では、この機器がどれほど役に立つかということと、製品として実現する可能性を検証する。
図 無免許LPWAの通信をゲートウェイで受信し、まとめて低カテゴリLTEで送り出す
出所 NTTドコモ
さらに、センサーなどの末端の機器とゲートウェイを数km離しての通信が可能かといったことや、1台のゲートウェイに100台規模のセンサー機器などを接続できるかといったことも検証する。
インターネットにつながる低カテゴリLTEについては、3つの方式を検証する。1つ目は通信速度を上り5Mbps、下り10Mbpsに落とした「カテゴリ1」。使用する周波数帯域幅はLTE規格の中でも最大となる20MHzのままだが、通信速度を抑えて消費電力と通信モジュールのコスト削減を目指した方式だ。NTTドコモは、カテゴリ1に「eDRX(extended Discontinuous Reception)」と呼ぶ消費電力低減技術を組み合わせた検証も実施する。eDRXとは、間欠的に(時間間隔を空けて)信号を送受信することで、機器の無線通信機能部をスリープ状態にして電力消費量を節約する技術だ。
2つ目の方式は「カテゴリM1」。通信速度を上り下りともに最大1Mbpsまで抑え、使用する周波数帯域幅を1.4MHzに狭めることで、消費電力と通信モジュールのコスト削減を狙ったもの。
3つ目となる「カテゴリNB1(NB-IoT)」は、通信速度をさらに下げて上り62kbps、下り21kbpsとし、使用する周波数帯域幅も180kHzまで狭めた方式だ。NTTドコモはそれぞれの方式の消費電力量を検証し、比較する予定。
無免許LPWAについては、アメリカの半導体メーカーであるSEMTECH社が開発した「LoRa」変調技術と920MHz帯を利用した方式で検証を始めるが、ほかの方式での検証も追って実施する予定。さらに、複数の方式による通信を同時に処理する実験も予定している。この実験は、無線LANやBluetoothの通信も加えて実施するという。
NTTドコモはこの実験で得た成果を生かして、2017年度中に低カテゴリLTE通信の商用サービスを開始することを目指すとしている。さらに、複数のLPWA通信に対応したゲートウェイの実用化を目指した開発も進める。
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