富士通は2017年5月8日、920MHz帯を使用する独自の無線通信技術を投入した通信機とゲートウェイを発売した。通信機の価格は親機となる「FUJITSU Network Edgiot AH1100」が3万5000円(税別:以下同様)で、子機となる「FUJITSU Network Edgiot AH1200」が2万9000円。ゲートウェイとなる「FUJITSU Network Edgiot GW1100」が3万8000円。
図 富士通が今回発売した通信機(左が親機で中が子機)と、ゲートウェイ(右)子機はスマートフォンほどの大きさであり、簡単に持ち運べる
出所 富士通
富士通が今回発売した通信機の特徴は、動的に通信路を再構成するメッシュネットワークを形成する点にある。富士通はこの製品を使う場所として、工事現場や工場、物流倉庫などの比較的狭い範囲を想定している。そこで働く作業員に通信機の子機を持たせ。作業員ることで現在位置を把握するシステムを作ることができる。
図 富士通が今回発売した通信機を利用してメッシュネットワークを構成した例。通信機を持つ人が徒歩で移動したら、最適な通信経路を再構成する
出所 富士通
現在位置を把握するシステムを作るには、この製品を利用する現場のあちこちにBluetooth Low Energy(BLE)のビーコンを発信する機器を据え付ける。BLEは2.4GHz帯の電波を使って、ごく少ない電力で電波を発信するので、到達距離は10メートル程度。
そして、作業員が持ち歩く通信機の子機はBLEの電波を受信する機能を持つ。受信したら位置を示す情報を富士通が独自開発した無線通信方式で送出する。送出した信号は親機に届き、親機はUSBで接続しているゲートウェイに信号を渡す。そのゲートウェイは信号をJSON(Java Script Object Notation)形式に変換してクラウドに送信する。BLEが発信する弱い信号をクラウドまで届かせることが可能になる。
通信機の子機が持つ通信機能は、マルチホップ通信が可能となっており、親機まで必ずしも1段階の通信で届かせようとする必要はなく、作業員が持つ通信機と親機の間は1対1の通信を想定したものにはなってない。マルチホップも許容するし、必要に応じて迂回路を用意する「メッシュネットワーク」を構成する機能を持つ。そして、子機を持つ作業員が徒歩で移動すると、その移動に合わせて、メッシュネットワークの親機までの通信ルートを動的に再構成する機能を備えている。通信機を持ったままの移動は時速10kmまで追随可能。
図 複数の子機によるメッシュネットワークの通信は1台の親機に集約し、親機は受信したデータをUSB接続のゲートウェイに渡す
出所 富士通
富士通はこれまで工場や工事現場の作業員の安全確保を目的としたシステムを開発してきた。作業員にBLEビーコンを受信する機器を持たせ、ビーコンを受信したらクラウドに送信することで現在位置を知らせるというものや、BLEで信号を発信する脈拍計測バンドなどを身体に取り付けて、作業員が健康に作業できているか、事故が発生していないか確認するシステムなどだ。
そして、このようなシステムではBLEの信号を受信し、クラウドに送信する機器として、スマートフォンを利用することが多かった。つまり、通信費用がかかるということだ。富士通が今回発売した製品はBLEビーコンだけでなく、BLE対応の生体信号検出バンドなどにも対応する。富士通は、携帯電話通信を利用する場合に比べて、今回発売した無線通信機器を利用することで、通信にかかるコストを35%ほど削減できるといている。
また富士通は、携帯電話の電波が届かない地下、トンネル、建物内での通信にも、今回発売した通信機器が役立つとしている。狭い範囲で親機を適切に配置すれば、簡単に無線ネットワークを構成できるからだ。
富士通は今後、この無線通信機器を同社が提供するサービスに応用し、顧客が抱える問題の解決にこの無線通信機器や、IoTシステムを使って取り組んでいくとしている。
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