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岩手県大船渡市で国内最大級75MWのバイオマス発電所建設へ、JFEエンジニアリングがEPCを受注

2017/04/10
(月)
SmartGridニューズレター編集部

JFEエンジニアリングは、大船渡発電株式会社から、バイオマス発電プラントの設計、調達、施工を受注したと発表した。

JFEエンジニアリングは2017年4月7日、大船渡発電株式会社から、バイオマス発電プラントの設計、調達、施工(EPC:Engineering、Procurement、Construction)を受注したと発表した。2017年10月に着工し、2019年12月ごろに商業運転開始の予定。大船渡発電は太平洋セメントとイーレックスが共同出資で設立した企業で、太平洋セメントの大船渡工場(岩手県大船渡市赤崎町字跡浜:あかさきちょうあざあとはま)敷地内にバイオマス発電プラントを建設し、発電事業を展開する予定になっている。出資比率は太平洋セメントが65%で、イーレックスが35%。

図 太平洋セメント大船渡工場の位置。三陸海岸の大船渡湾の奥に位置している

図 太平洋セメント大船渡工場の位置。三陸海岸の大船渡湾の奥に位置している

出所 太平洋セメント

JFEエンジニアリングが今回受注したプラントの最大出力は75MW(7万5000kW)となる予定。フィンランドValmet Technologies社の循環流動層(Circulating Fluidized Bed)ボイラー「CYMICボイラー」を導入する。循環流動層ボイラーは、ほかの方式と比べて低温(800℃〜950℃)で、時間をかけて燃料を燃やすボイラー。窒素酸化物(NOx)の排出量が少なく、ボイラー内に石灰石を投入することで、硫黄酸化物(SOx)排出量を抑えられるという特徴がある。そして、最大の特徴としてこれまでの火力発電設備では燃料として利用しにくかったものも燃料として燃やすことができるという点が挙げられる。この特徴から、木質バイオマス発電の発電設備として採用する例が多い。

循環流動層ボイラーはJFEエンジニアリング自身も製品化しているが、提供しているものが発電規模50MW(50000kW)に対応するものまで。75MWに対応するものは製品化していない。今回はJFEエンジニアリングが新規開発するよりも、すでに製品化しているValmet Technologies社の製品を利用したほうが納期を短縮できるという考えで、Valmet Technologies社の循環流動層ボイラーの採用が決まった。

大船渡発電では、今回建設する発電プラントの燃料としてバイオマス燃料90%に、10%の石炭を利用する計画を立てている。そして、バイオマス燃料としてパーム椰子殻(Palm Kernel Shell:PKS)に加えて、パーム椰子の房(Empty Fruits Bunch:EFB)を利用する予定となっている。

パーム椰子殻はパーム椰子の実から油を絞り出した殻であり、バイオマス発電の燃料として利用する例も多い。そしてパーム椰子の実は房状にいくつもの実がなる。そこから実を取り出して空となった繊維状の房がEFBだ。パーム油生産の過程で、パーム椰子殻だけでなく、EFBも大量に発生するが、バイオマス燃料として利用する動きはなかなか進まなかった。

図 燃料として使用するパーム椰子殻(左)と、パームの実を取り出した後の房(EFB:右)

図 燃料として使用するパーム椰子殻(左)と、パームの実を取り出した後の房(EFB:右)

出所 太平洋セメント

理由としては、EFBは個々の房が大きく、貯蔵、輸送、取扱に手がかかるという問題が挙げられる。さらに、EFBはカリウムを含んでおり、ボイラーで燃焼させるとカリウム分がボイラー内壁に付着するという問題もあって、そのままの状態ではバイオマス燃料として利用することが難しかったのだ。

太平洋セメントは日本の化学メーカーであるサラヤと、タイRematec & KSN Thailand社、マレーシアThe Green Biomass社と共同で技術開発に挑み、EFBのバイオマス燃料化に成功したとしている。毎年大量に発生し、ほかに使いみちがないEFBを燃料として利用することで、安定操業を目指すとしている。ちなみにJFEエンジニアリングによると、循環流動層ボイラーで燃料としてEFBを利用するのは、これが日本国内で初の例になるという。

発電プラントに最大出力は先述の通り75MW、大船渡発電は年間発電量をおよそ480GWh(4億8000万kWh)と見積もっている。一般世帯の年間電力消費量に換算すると約11万世帯分になる。発電した電力は全量をイーレックスに売電する。


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JFEエンジニアリング

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