「気候・エネルギーに関するグローバルビジョン」を発表
欧州委員会(European Commission)と外務・安全保障政策上級代表は、「気候・エネルギーに関するグローバルビジョン(global climate and energy vision)」をベルギー現地時間の2025年10月16日に発表した。2025年2月に発表した域内政策「クリーン産業ディール」注1の対外的な側面を担うもので、EUのクリーン技術製造能力を世界市場の15%に引き上げる目標を提案している。
「クリーン産業ディール」を世界展開へ
気候・エネルギーに関するグローバルビジョンは、EUの産業競争力強化と脱炭素化を目的とした「クリーン産業ディール」の対外戦略にあたるもの。同ビジョンでは、クリーン技術への移行の利益を最大化するためには、EU自身が世界各国にクリーン技術と適応ソリューションを供給する産業大国になる必要があると強調し、EUのクリーン技術製造能力を世界市場の15%に達するまで引き上げるという目標を提案している。
戦略の柱の1つが、パートナーシップの強化である。EUは、パリ協定の目標達成に向けた信頼できるパートナーであるとし、既存および新規の二国間・多国間同盟を推進する。具体的には、自由貿易協定(FTA)や「公正なエネルギー移行パートナーシップ(Just Energy Transition Partnerships:JETPs)」注2、「グリーンアライアンス」注3など、さまざまなレベルでの連携を模索する。
また、世界の気候目標達成、排出量削減、イノベーション促進のためには炭素価格(カーボン・プライシング)が不可欠であると指摘。専用のタスクフォースを設置するなどにより、他国における炭素価格政策の策定支援をはじめとしたグローバルでの取り組みにコミットするとしている。
さらに、気候変動が安全保障に及ぼす影響に対処する行動を強化することも明記された。多国間、および二国間レベルでの関与を深める方針だ。
主な行動計画としては、パリ協定やグローバル・ストックテイク(GST)注4のコミットメント実現に向けた政治的機運の醸成のほか、以下の項目を挙げている。
・EU対外クリーン移行ビジネス評議会(EU external Clean Transition Business Council)の設立やビジネスフォーラムの開催による、EUクリーン技術ビジネスの国際的支援。
・「グローバル・ゲートウェイ(Global Gateway)投資ハブ」注5を活用した、EU域外での共同投資プロジェクト支援とEU技術の需要喚起。
・世界規模での強靭なクリーン技術のバリューチェーンのための互恵的なパートナーシップ網の拡大。
・クリーンで強靭な移行のための国際金融機関の改革。
注1:クリーン産業ディール(Clean Industrial Deal):2025年2月に欧州委員会が発表したEU域内の産業政策。エネルギー多消費産業やクリーン技術分野の脱炭素化、競争力強化、規制の複雑さへの対処などを目的とする。
注2:公正なエネルギー移行パートナーシップ(Just Energy Transition Partnerships:JETPs):先進国が資金提供や技術支援を通じて、途上国(特に石炭火力への依存度が高い国)の脱炭素化と公正な移行を支援するためのパートナーシップ枠組み。
注3:グリーンアライアンス:EUが特定のパートナー国と結ぶ、環境・気候分野での包括的な協力枠組み。
注4:グローバル・ストックテイク(GST):パリ協定に基づき、世界の気候変動対策の進捗状況を5年ごとに評価する仕組み。
注5:グローバル・ゲートウェイ(Global Gateway)投資ハブ:EUが推進する世界的なインフラ投資戦略「グローバル・ゲートウェイ戦略」に基づき、特定の国や地域でEUの投資やビジネス機会を促進する仕組み。
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