NECは2016年7月3日、ウェアラブル端末を利用してバス運転手の生体情報を取得し、疲労度を判定するシステムの実証実験を実施したと発表した。実験には、路線バスや長距離高速バスなどを運行している小田急シティバスが協力した。
近年、バス運転手の健康状態悪化を原因とするバスの事故が増えている。死亡者を出す大惨事に至る例もある。バス事業者だけでなく、公共交通機関を運用する事業者は、このような事故を引き起こす前に、運転手の健康管理を徹底する必要があるが、その体制が整っていない事業者も多い。
今回の実験では、バス運転手の手首にウェアラブル端末を装着し、運転手の脈拍、表面温度、湿度、体の揺れなどといった生体情報を取得した。そのデータはウェアラブル端末はそのデータを運転手の近くにおいてあるスマートフォンに送信し、スマートフォンは携帯電話通信網とインターネットを通して、NECが運営するクラウドサービスのデータセンターにデータを送信する。
クラウドサービス側では、受け取ったデータを解析して運転手の「疲労度」を判定する。判定結果は、事業所などの管理拠点からWebブラウザでクラウドに接続することで確認できる。解析結果はアイコンやグラフなどを使ってひと目で分かる形で表示し、ウェアラブル端末が検知するデータをリアルタイムで反映させる。管理者は運転手ごとの疲労度を把握し、乗務スケジュールの変更や、職場環境改善などの手を打つことが可能になる。
図 ウェアラブル端末を装着したところ(左)と、運転手ごとの疲労度を表示する画面(右)
出所 NEC
NECによると実証実験の結果、運転手自身も気付いていない体調変化や疲労を検知することに成功したという。今後は判定精度をより高めながら、乗務予定や乗務実績を管理するシステムなどの業務システムとの連携を図り、バスや鉄道の運転手が良好な健康状態で高い能力を発揮できる環境を作れるように、運転手の勤務形態の改革に貢献していくとしている。また、勤務形態を改革することで運行品質や安全性を高め、バスや鉄道の利用者に提供するサービスの質を向上させるという面でも協力していくという。
■リンク
NEC