住友電気工業と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年12月18日、アメリカ・カリフォルニア州の電力卸売市場にレドックスフロー電池を接続し、最も大きな収益が見込める運用方法を検証すると発表した。レドックスフロー電池は、充放電の深度や回数に制約がなく、長期間使用してもほとんど劣化することなく、使用開始当初と変わらない性能を発揮する。電力卸売市場に接続して、送電周波数調整に必要な電力供給など瞬時の対応が必要な用途と、電力取引など大電力の充放電が必要な用途の両方に対応しながら、収益を最大化する運用方法を探る。ちなみに、アメリカ国内の電力卸売市場にレドックスフロー電池を接続するのは、これが初めての例になるという。
図 電力卸売市場に接続するレドックスフロー電池
出所 住友電気工業
検証では、2017年3月に現地に設置したレドックスフロー電池を使用する。これは、現地の大手電力会社であるSan Diego Gas and Electric(SDG&E)の変電所内に設置したもので、出力2MW(2000kW)、蓄電容量8MWh(8000kWh)の性能を発揮する。このレドックスフロー電池は現地の送電網に接続し、送電電圧調整のための電力供給や、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電量の余剰分の吸収などに使用していた。同時に、蓄電池の基礎特性と信頼性を評価も続けていた。
そして今回はSDG&Eの協力を得て、カリフォルニア州独立系統運用機関(CAISO:California Independent System Operator)が開設している電力卸売市場にレドックスフロー電池を接続する。カリフォルニア州では再生可能エネルギー発電所の増加により、送電周波数調整と、ピークシフトなど大電力の供給時間を移動させるような要望が多くなっている。CAISOが開設している電力卸売市場は、両方の要望に応えるサービスを提供している。
住友電気工業によるとレドックスフロー電池は、周波数調整のための電力供給など、瞬時の反応が必要な用途と、ピークシフトなどの大電力を充放電する用途のどちらにも適しているという。電力卸売市場に接続して、どちらの要望にも応えながら、収益を最大化する運用方法を探る。さらに、現在制度設計中の蓄電池を使用した新サービスにもいち早く対応し、さらに収益を上げることも目指すとしている。