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次世代宇宙用ソーラーアレイ製品を開発へ、出光興産

宇宙用ソーラーアレイを手掛ける米Sourceと協業
2025/11/07
(金)

宇宙用次世代ソーラーアレイ製品開発へ米Sourceと協業

 出光興産株式会社(以下、出光興産)は、宇宙用の次世代ソーラーアレイ注1製品の共同開発をするため、米スタートアップのSource Energy Company(以下、Source)と覚書を締結した。出光興産の宇宙用CIGS注2太陽電池技術と、Sourceが開発する宇宙用ソーラーアレイ技術を組み合わせ、衛星などの宇宙機向けの電源システムを開発するのが狙い(図1)。両社が2025年11月6日に発表した。

図1 出光興産が開発する宇宙用CIGS太陽電池のサンプル

出所
 出光興産株式会社 ニュースリリース 2025年11月6日、「出光興産と米国Source Energy Companyが宇宙市場向け次世代ソーラーアレイ製品の共同開発に向けた戦略的協業を開始」

供給体制の強靭化に向けた取り組みも開始

 近年、衛星通信量の増加や地球観測ネットワークの拡大を背景に、宇宙産業の市場規模が拡大している。特に衛星通信は、軍事・防衛用途に加え、一般機器での利用も進みビジネス市場が急速に成長している。こうした宇宙機の運用で使われる太陽電池には、過酷な宇宙環境への耐性など高い性能が求められる。従来はガリウムヒ素(GaAs)系太陽電池が主流であったが、世界的な供給不足や衛星需要の急拡大を背景に、代替技術へのニーズが高まっている。

 出光興産は、地上用太陽電池パネルについて、30年以上の研究開発と累計6GW超の生産実績がある。同社が開発する宇宙用CIGS太陽電池は、放射線によるダメージを自己修復でき、出力を長期間維持できるという。一般的にソーラーアレイは放射線による劣化を見越して大型に設計されるが、CIGSは高い放射線耐性によりその必要性を低減できる。そのため、デバイス層が数マイクロメートルと薄く、放射線から保護するためのカバーガラスを持たない薄膜・軽量な構造も可能だとする。これらにより、ソーラーアレイを利用する衛星の重量削減と、エンドユーザーである衛星メーカーのコスト削減につなげるという。

 Sourceは、宇宙用太陽電池製品の製造・供給で実績がある。

 今回の協業では、両社の知見をもとに、次世代ソーラーアレイ製品を開発するのに加え、宇宙用太陽電池製品の供給体制の強靭化にも取り組む。また、Sourceは、出光興産の宇宙用CIGS太陽電池技術の実用化に備え、コロラド州ロングモントにある自社設備で同技術に関する開発・試験を出光興産と共同で実施する。さらに、出光興産のCIGS技術を導入することで、自社製品を拡充し、より高い放射線耐性が求められる軌道ミッション向けの需要拡大に対応する。


注1:ソーラーアレイ:複数のソーラーパネルを組み合わせた、展開機構(打ち上げ時に収納された構造物が宇宙空間で所定の形状に広がるための機能)を備えたシステム。太陽電池全体の構成単位の中で最大の単位。
注2:CIGS:Cu(銅)、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Se(セレン)の頭文字からなる化合物半導体。

参考サイト

出光興産株式会社 ニュースリリース 2025年11月6日、「出光興産と米国Source Energy Companyが宇宙市場向け次世代ソーラーアレイ製品の共同開発に向けた戦略的協業を開始」
 

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