M2M/IoTアーキテクチャの国際標準化を目指す「IEEE P2413」
写真2 IEEE-SAプレジデントのブルース・クリーマー(Bruce Kraemer)氏
〔1〕業界の相互接続性を実現するフレームワークの策定
シンポジウムでは、IEEE-SA(IEEE Standards Association)プレジデントのブルース・クリーマー(Bruce Kraemer)氏による特別講演が行われた(写真2)。ここでは、IEEE(米国電気電子学会)注4が、今後急激な発展が予想されるM2M/IoT業界の規格の標準化を目指して、2014年6月に設立したプロジェクト「IEEE P2413」注5の最新動向について語った。
M2M/IoTの活用については、現在、医療や運輸、エネルギー、製造などの各業界でそれぞれ独自の(垂直的な)標準化が審議されている。しかし、M2M/IoTでは、各業界を横断した相互接続性(インターオペラビィティ)を高めることが重要となる。P2413では、このような業界横断的(水平的)な相互接続性を実現する、共通の構造的枠組み(アーキテクチャル・フレームワーク)の策定を目指している(図1)。具体的には、次のような目標を掲げ、2018年までの標準化の完了を目指している。
図1 M2M/IoTアプリケーションを利用する業界と領域
〔出所:ブルース・クリーマー氏講演資料より〕
- システム同士の機能の補完や相互接続性を高めることによって、さまざまな産業が利用し、新たな価値を創出できるプラットフォームを構築し、M2M/IoT市場の成長を加速させる
- M2M/IoTアプリケーションからの要求もカバーするM2M/IoTの構造的フレームワークを定義する
- M2M/IoTのセキュリティや安全性、機能評価などのシステムの透明性を高める
- 世界中でさまざまな企業の参加を促し、産業の分断化を減らして、M2M/IoT市場を拡大する
〔2〕「Things」(モノ)の定義と抽象レベル
また、P2413では、Internet of Things(モノのインターネット)の「Things」(モノ)について、次の3つの定義をしている注6。
- 「Things」には、モノ(ハードウェア)とアプリケーションとサービスが統合されている
- 「Things」の情報交換は、水平(Holizontal)に、あるいは垂直(Vertical)に、あるいは両方でも行われる
- 「Things」のプロパティは、リアルあるいはバーチャルに対応できる
さらに、P2413では、図2に示すように、「Things」の抽象レベル(対応するレイヤ構成)が検討されている。この階層構造を共有することによって、水平的なIoT環境が実現され、産業をまたがった相互接続性(インターオペラビィティ)を実現できるようになる。
図2 「Things」の抽象レベル(対応するレイヤ構成)
図2 「Things」の抽象レベル(対応するレイヤ構成)
〔4〕IEEE P2413と国際標準化機関との連携
さらに、P2413では、M2M/IoTの国際標準化に取り組んでいる各機関(表2)などとリエゾン(連携)をとるなど、壮大な国際戦略を推進しており、今後の展開が注目されている。
表2 IEEE P2413が連携している国際標準化機関
〔出所:各種資料をもとに編集部作成〕
また、このほかにも、ホームネットワークの標準規格の策定を進めるAllSeen Allianceなどとも連携を進めている。
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M2M/IoTはさまざまな産業において実践時代を迎えており、業界の動きの速さには目を見張るものがある。国内で生まれたIoT推進委員会や国際的に標準化を進めるIEEE P2413をはじめ、各機関の今後の動きに注目する必要がある。
▼ 注4
IEEE:Institute of Electrical and Electronic Engineers、米国電気電子学会。世界160以上の国々の電気/コンピュータサイエンスを主としたエンジニアや科学者等の約40万人(日本国内には約1万4,000人)の会員数を擁す世界最大の学会。
▼ 注5
IEEE P2413:Internet of Things(IoT) Architecture Working Group、IEEEにおいて、M2M/IoTのアーキテクチャ標準を策定するグループ。P2413とは、IEEEのプロジェクト(P)名で、「2413」という番号は、IEEE-SA(標準策定委員会)から割り振られた番号である。2015年9月時点で、会員企業は25社であり、日本からは日立製作所、ルネサス エレクトロニクス、東芝、横河電機が会員となっている。
▼ 注6
https://www.iajapan.org/iot/event/2015/symp0904.htmlのブルース・クリーマー氏の講演資料16ページを参照