IoTと密接に関係したIETFのアジェンダ
〔1〕t2trg: Joint W3C IG WoT/Thing-to-Thing PRG
アジェンダ(https://datatracker.ietf.org/meeting/94/agenda.html)にあるt2trgは、IETFにおけるThing-to-Thing Research Group (t2trg)というモノとモノに関する研究グループであり、まさにM2M/IoT研究グループである。ʻJoint W3C IG WoT/Thingto-Thing PRGʼとあるように、今回はW3C IG(Interest Group、関心をもつグループ)とIETFが合同で、具体的にM2M/IoTでつながっているネットワークシステムを、WoTでどのように制御し管理するかを共同で議論した。
このほか、YANG Tutorial and YANG Advice/Editing Sessionという、XMLベースの「YANG」に関するセッションも行われた。
〔2〕新しい「detnet:Deterministic Networking WG」への期待
また、IETFのルーティング分野(RTG:Routing Area)で新しく設立されたdetnet(Deterministic Networking WG注6)では、まさにIoT系の新しい課題をレイヤ2(L2)、レイヤ3(L3)などの下位レイヤでどのように対応し実現するかが議論された。
特に、Indusyrie 4.0のような新しい製造分野におけるプラントシステムで、厳しい「遅延対策」や「品質管理」が必要とされる場合、下位レイヤのL2、L3まできちんとしたシステムが求められる。detnetは、それらをどのように実現するかを検討するワーキンググループ(WG)である。
ここでは、電力やガスなどのファシリティやプラント関係に加えて、プロフェッショナルオーディオも含まれて検討されおり、ドルビーラボラトリーズなども参加しているユニークなWGである。
〔3〕あらゆるWGでセキュリティを義務化
インターネットをよりミッションクリティカルな産業分野に適用できるようにするには、国際的に激化しているサイバー攻撃に対応することが最重要課題である。
このため、IETFでは、従来の取り組みから一段とレベルを上げ、IETFのすべてのワーキンググループ(WG)で、サイバーセキュリティを強化した標準化を策定するよう義務化した。
さらに、ISOC(インターネット学会)とIBA(インターネットアーキテクチャ委員会)、IETFで「コラボラティブセキュリティ」という活動を開始し、インターネット関係者全員が、イノベーションにつながるようなセキュリティに取り組んでいく方針が打ち出された。
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同会議の成果を出発として、IETFが、今後、ダイナミックな展開を始めた本格的なM2M/IoT時代の羅針盤となるような活動を期待したい。
◎取材協力(敬称略)
江崎 浩(えさき ひろし)
東京大学 大学院 情報理工学系研究科 教授/WIDEプロジェクト代表
1987年 九州大学 修士課程修了後、(株)東芝入社。1990年より2年間 米国ニュージャージ州 ベルコア社、1994年より2年間 米国ニューヨーク市コロンビア大学CTRにて客員研究員として、高速インターネットアーキテクチャの研究に従事。1994年 MPLS技術のもととなるセルスイッチルータ技術を提案。
1998年10月より 東京大学 大型計算機センター助教授、2001年4月より 東京大学 情報理工学系研究科 助教授、2005年4月より 現職。
ISOC理事、MPLS-JAPAN代表、IPv6普及・高度化推進協議会専務理事、JPNIC 副理事長。日本データセンター協会 理事/運営委員会委員長。工学博士(東京大学)。
▼ 注6
Deterministic Networking:規定された通信品質の要求条件を満たすようなネットワークのこと。