[再生可能エネルギーと電力システム技術]

再生可能エネルギーと電力システム技術

─第2回 太陽光発電の出力変動への対策─
2013/03/01
(金)

電力システム全体において、太陽光発電を含めた総出力変動に対する影響を議論するためには、太陽光発電の「ならし効果」(電力変動が平準化される効果)について、よく理解する必要がある。ここでは、まず「ならし効果」とは何かについて説明したうえで、太陽光発電の出力変動の影響を受ける電力システムの環境下で、どのように電力の需給バランスを維持していけばよいかについて、近年の検討されている状況や今後の展望について解説する。

大量の太陽光発電がもたらす大きな需給変動

現在、電力供給システムの低炭素化に向けた政府の指針として、 2030年時点で5300万kW(3.11震災前の東京電力の夏季ピーク電力にほぼ匹敵する)の太陽光発電を導入することが目標とされている注1。果たして、このような大量導入が実現した場合、電力システムにおいて、どのような電力の需給バランスの変動が生じるだろうか。

太陽光発電は、一般家庭の屋根に設置する形態を中心に、住宅や企業が消費する電力需要の分布に比例するようなイメージで、万遍なく国土全体に導入されると考えられる。しかしその出力(発電電力の大きさ)注2は、晴れや曇り、雨などの気象条件の変化に依存して激しく変動する。

電力システムの側からは、太陽光発電の出力が変動すると、見かけ上の電力需要が変動したように見えるため、これまで以上に大きく供給力(発電電力の総量。より正確には同期発電機への機械的入力を指す。詳細は第1回記事を参照)を調整する必要が生じる。

図1に、ある1地点(例:千代田区麹町三番町20番地の住宅)における太陽光発電出力の変動の事例を示す。雲の移動に伴って、とくに中央の正午付近の時間では、快晴では発電量が非常に大きいものの、曇りになると急速に発電量が小さくなるなど、非常に激しい出力変動が生じていることがわかる。しかし図1のデータはあくまでも「ある1地点での変動」であり、電力システム全体にこのような変動が生じるわけではない。

図1 ある1地点での太陽光発電による出力変動の例

図1  ある1地点での太陽光発電による出力変動の例

例えば具体的には、図2に示すように、雲は時間をかけて移動していくため、各地域(例:千代田区麹町という地域、およびその隣接する地域)における出力変動は、雲の移動時間の分だけタイミングがずれて生じる。その結果、出力変動の一部はその地域に設置されている複数の太陽光発電によってお互いに打ち消されるため、システム全体での需給バランスを考える際には、もう少し緩やかな変動が生じることになる(図3)。この効果は一般的に「ならし効果」注3と呼ばれている。なお、ある地域と隣接する地域との間の気象条件の相関性(類似の度合い)は、両地域間の距離が長いほど小さくなるため、お互いに打ち消し合う可能性が高まることで、ならし効果(平準化の効果)は大きくなる。

図2 雲の移動に伴う太陽光発電出力変動のずれ

図2  雲の移動に伴う太陽光発電出力変動のずれ

図3 「ならし効果」のイメージ

図3  「ならし効果」のイメージ

太陽光発電が大量に導入された場合、大規模な電力システム内の合計での総発電出力の変動は、「全国各地における過去の日照時間の変動などの気象データ」から推定することができる。

気象庁が保有する過去の気象データや、全国各地での最近の測定データをもとに分析すると、平均的には10分間で10%程度の総発電出力の変動が出るとも言われている。この変動周期は、本連載の第1回で解説した通り、LFC注4が変動補償を行う時間領域(すなわち10〜20分程度の周期で変動する領域)に相当する。

図4に示す、①太陽光発電がない元の電力需要の変動量と日射の変化(すなわち、②太陽光発電の出力変動)は互いに相関関係がない(無相関)と考えると、これらを合算した「③全体での変動量」は、図4に示すように、元の電力需要の変動よりも確実に大きくなる(図4の斜めの直線)。したがって、LFC制御にはさらに大きい調整力が求められることになる。

図4 元の電力需要の変動、太陽光発電の出力変動、およびそれらを合算した全体での変動量の関係

図4  元の電力需要の変動、太陽光発電の出力変動、およびそれらを合算した全体での変動量の関係

なお、風力発電の場合は、風況(風の向きや風速など)の良い特定の地域に偏って導入される(1カ所に集中して設置される)ことが想定されるため、先に述べた「ならし効果」は相対的に働きにくい可能性もある。すなわち、①元の電力需要の変動量に対して、さらに風力発電も入ってきた場合の全体での変動幅は、図4と同様の原理にしたがってさらに大きくなることは言うまでもない。


▼ 注1
出所は、経済産業省次世代送配電ネットワーク研究会、『低炭素社会実現のための次世代送配電ネットワークの構築に向けて 〜次世代送配電ネットワーク研究会報告書〜』、2010年(平成22年)4月

▼ 注2
ここで「出力」とは、「発電電力の大きさ」であると定義して、以後は電力であることを断りなしに「出力」と使っている。

▼ 注3
ならし効果:ある地域全体で考えた場合、太陽光発電パネルは、お互いに距離が離れたところに設置されているため、それぞれの太陽光発電パネルに雲がかかるタイミングは、ずれるようになる。このため、出力の変動が打ち消し合って、全体的な変動が穏やかになってくる(図3の右上)。これをならし効果という。

▼ 注4
LFC:Load Frequency Control、負荷周波数制御。電力システム(電力系統)の周波数の変動などを検出して制御信号を発電所に送り、発電所の発電機出力を適切に制御して需給バランスを調整し、周波数変動を許容値以内に収めるよう制御すること。10〜20分程度の周期で変動する負荷の調整を行う技術。

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