第2世代のHVDC 12V方式の実現と海外の動向
〔1〕感電・地絡防止回路や集中電源の開発
高圧の直流(DC340V)によるHVDCの基本は、高圧の直流でサーバラックに電源を供給する方式である。
しかし、この技術開発はもう10年近く行ってきており、第1世代のHVDCは進化してきている。すなわち、安全性をまず担保するために、高圧(DC340V)で危険だったシステムを安全に運用できる感電・地絡防止回路を開発した(図6)。さらに、サーバにDC12Vを安定して供給する集中電源部(DC-DCコンバータを集中配備した)を開発した。これによって、高圧(DC340V)を直接サーバラックに接続することが可能になり、システムの複雑性がなくなりシンプルになった。
このように進化させたシステムは、第2世代のHVDCシステムともいえるシステムとして進化している。
〔2〕グーグル、マイクロソフト、フェースブック:DC12Vインタフェース
さて、海外の動きを見ると、例えば米国のグーグル(Google)やマイクロソフト(Microsoft)、フェースブック(Facebook)などの大手データセンター企業では、図7に示すように、入り口をすべてDC12Vインタフェースにしてサーバに渡す方式を、独自に進めている。また、顧客のサーバやストレージなどの設備を預かってビジネスを行う日本と違って、米国では、例えばグーグルやフェースブック、マイクロソフトなどは、自社のサービスを主体に提供するためのデータセンターとなっている。
図7 DC12Vで動作するグーグル、マイクロソフト、フェースブックのデータセンター
ここでの決定的な違いは、日本ではデータセンターに設置されて使うサーバやストレージの機種は顧客に応じて多種多様であるが、米国のクラウド事業者の場合は自社の方針に従って機種の選定を均一にできる(同一のベンダに統一できる)。
このような違いがあるため、グーグルやマイクロソフトなどの大規模なデータセンターの12V化は、圧倒的に北米が進んでいる状況となっている。
今後の展開:HVDC・直流機器の標準化に向けた展開
現在、第2世代のHVDCシステムへの進展とともに、HVDCシステムのDC12Vの部分のプラグやインタフェースを含めて、きちんと標準化するために必要な技術仕様を、「東大グリーンICTプロジェクト」注6(GUTP:Green University of Tokyo Project)で検討が開始されている。
GUTPは、ICTを活用した省エネの実現を目指す産学連携組織であり、ハードウェアあるいはソフトウェアベンダをはじめ、SIer、通信事業者、空調関連企業、建設会社など、約70の組織が参加している。
2013年5月には分科会として「DCEM WG」(Data Center Energy Manage-ment Working Group)を創設。データセンターでの先進的エネルギー管理・制御技術の相互接続性の確立と技術標準化を進めている。
具体的には、
- SWG1:DCIM(Data Center Infrastructure Management)分科会
- SWG2:HDVC System分科会を設け、DCIM(データセンター基盤管理)とHVDC/12V電源供給の技術仕様を作成する予定であるが、最初にDC12Vインタフェースの標準化に取り組んでいる。今後、その実証実験を通して、1年後の2014年に標準規格化を完成させることを目指している。
このように、日本では、まずDCEM WGで技術標準仕様を作成するが、これを国内のASPIC(ASP-SaaS-Cloud ConsortiumA、SP・SaaS・クラウド コンソーシアム)やJDCC(Japan Data Center Council、日本データセンター協会)において審議し、その後、ITUやIEEE、ISOで国際標準化することが想定されている。