[特別レポート]

けいはんなデータセンターにおける 新世代のエネルギー制御システム

― エネルギー管理制御(DEMS)でデータセンター全体の消費電力を最適化 ―
2014/02/01
(土)

2013 年10 月1日、ATR内に、けいはんなデータセンターが構築された。同データセンターは、環境省の「平成25年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」として、2013年7月15日~ 2016年3月31日までの約3年間で6.9億円(計画額)をかけて実施されるもの。同センター独自のICT 機器からの発熱を3つのアイル(通路)で段階的に上げて排熱利用していく配置を施すなど、ユニークなシステム構成となっている。さらにDEMS(エネルギー管理制御)とVM(仮想化技術)との連携を図った新しい技術開発も進めている。同センターの知見が新時代のデータセンターシステム運用のあり方のヒントとなると期待できる。なお本記事は、大阪大学サイバーメディアセンター 松岡茂登教授への取材をもとにまとめたものである。

写真1 けいはんなデータセンターのあるATRの概観写真1 けいはんなデータセンターのあるATRの概観

環境省の実証事業としてスタート

けいはんなデータセンター(写真2、データセンター内のパネル)は、環境省の「平成25年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」として、2013年7月15日〜2016年3月31日の3年間で6.9億円(計画額)をかけて実施される(表1)。

写真2 けいはんなデータセンター内の「平成25年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」のパネル。写真2 けいはんなデータセンター内の「平成25年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」のパネル。

表1 けいはんなデータセンターの概要表1 けいはんなデータセンターの概要

運営体制は、NTTデータ先端技術を筆頭に、大阪大学、高砂熱学工業、ATRを中心に、協賛企業として富士通、Schneider Electric(シュナイダーエレクトリック)が参画。例えば、富士通はファンレスサーバ注2、Schneider ElectricはDCIM注3ソフトを同センターに提供している。

同事業のテーマは「データセンターの抜本的低炭素化とオフィス等への廃熱利活用に関する共同技術開発」であるが、特に「排熱利活用」に重点を置き、これによってさらに抜本的にCO2排出を削減することを目的としている。そのために考えられたのが、データセンター内の3つのアイルの配置であった(後述)。

またもう1つの目的は、1社による囲い込み事業ではなく、業界連携での推進である。

現在のデータセンターは、囲い込み中心の垂直統合型のシステム構成が主であるが、データセンター自体は複数の機器等のコンビネーションによって構築されたシステムであるため、例えばサーバなどのICT機器だけ、あるいは空調部分だけを電力削減しても、全体の消費エネルギー(電力)の最適化は得られない。これらを解決するために、同センターでは、空調やサーバ、データセンター事業の専門家など、すべてのレイヤあるいはパーツごとの専門家を集めて、システム全体での効率化を目指している。

さらに、この実証事業で得られた知見は、例えば空調ならアシュレイ(ASHRAE)注4、制御インタフェースならITU注5などというように、各種標準化機関に申請して標準化し、それらを日本発の技術として確立し普及させることを目指している。


▼ 注1
ATR:Advanced Telecom-munications Research Institute International、株式会社国際電気通信基礎技術研究所

▼ 注2
ファンレスサーバ:ファンを搭載していないサーバ。

▼ 注3
DCIM:Data Center Infrastructure Management。データセンター全体の電源、冷却、セキュリティ、エネルギーの監視、運用、分析、最適化を行うこと。

▼ 注4
ASHRAE:American Society of Heating, Re-frigerating and Air-Conditioning Engineers、アメリカ暖房冷凍空調学会。アシュレイ。

▼ 注5
ITU:International Telecommunication Union、国際電気通信連合。

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